ホステスは売掛金の回収責任を負わせられた

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 銀座のクラブにおいて客の支払い方法は「後日振込」でした(*1)。一般的に客はクラブで支払わず、後日請求書をもらった後に支払っていました(*2)。支払い(振込)の期日は「およそ2カ月以内」でした(*1)。クラブ側は未払いの客に対し「売掛金」という債権を持つ立場にあったのです。

 クラブでは、まず席代として4~6万円のチャージ料があり、飲み物は別途注文となっていました(*3)。クラブは概ね2時間制をとっていました(*3)。

 法律的な位置づけとしては、クラブは「風営法」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)における「風俗営業接待飲食等営業1号営業」に該当していました(*4)。風営法により、風俗営業接待飲食等営業1号営業に該当する店舗は、「都道府県公安委員会」から営業許可を得なければなりませんでした(*4)。

 売掛金の話に戻ると、クラブ側ではなくホステス側が、この債権(売掛金)の「回収責任」を持ちました(*1)。逆から言うと、クラブ側がホステス側に「回収責任」を負わせていました。

 ホステス側が客からの売掛金回収に成功したら、クラブ側はその約7割をホステス側に払いました(*1)。クラブ側とホステス側の間で「売掛金の取り分」が決まっていたのです。例えば売掛金200万円の場合、回収に成功したら、ホステス側には140万円、クラブ側には60万円が入ったのです。

 しかし客から振込がなかった場合、未回収金は「ホステス側の借金」(クラブ側が債権者)となりました(*1)。

 おそらくクラブ側が「振込先の口座」を管理していたと考えられます。借金に関しては2パターンあったと推測されます。1つが、売掛金における「クラブ側の取り分」(約3割)が、ホステス側の借金になった可能性です。この場合、売掛金200万円であれば、「クラブ側の取り分」は60万円となり、その60万円がホステス側の借金になりました。

 もう1つが、「売掛金全額」(10割)がホステス側の借金になった可能性です。この場合、売掛金200万円であれば、200万円がホステス側の借金になりました。

 ホステス側には「売掛金回収代行」の需要が生まれました。

 ヤクザ組織が売掛金回収代行を担いました。ヤクザ組織業界では売掛金回収代行は「追い込み」もしくは「切り取り」と呼ばれていました(*5)。大きい金額の回収は「追い込み」、小さい金額の回収は「切り取り」とそれぞれ呼ばれており(*5)、回収金額の多寡によって言葉が使い分けられていました。

 ホステスの売掛金回収代行は「切り取り」に該当しました(*5)。切り取りの報酬は「回収済み金額の半分」でした(*5)。ちなみにヤクザ組織業界では「回収金額の半分を報酬とする」ことは「取り半」と呼ばれ、回収代行における報酬の相場でした(*5)。

 切り取りを利用して回収した場合、その後、ホステスと客の関係は概ね消滅したようです(*1)。

 クラブでは一般的に「永久指名制」がとられていました(*6)。指名ホステスは「係(かかり)」(関西では「口座」)と呼ばれていました(*6)。「係」の立場のホステスが、売掛金の回収責任を持たなければなりませんでした(*6)。一方、クラブには「係」ではないホステスもおり、彼女らは「ヘルプ役」として時給で働いていました(*1)。

 ちなみに風俗のデリヘルに従事する女性の給料は「バック制」がとられていました(*7)。バック制では、客の支払った代金の一部が、デリヘル嬢の給料となりました(*7)。一般的にデリヘル嬢側の取り分(バック率)は5割でした(*7)。しかし店側がバック率の決定権を持っている為、中にはバック率が4割の店もありました(*7)。逆に高級店(プレー料金3~4万円)の場合、バック率を7割としているところもありました(*7)。

<引用・参考文献>

*1 『日刊ゲンダイ』2025年4月22日号(21日発行)「連載⑥ ワケあって死ぬまで働きます 銀座クラブホステス哀愁の日々」(荒川久美)

*2 『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(伊藤博敏、2016年、小学館文庫),p329

*3 『日本水商売協会-コロナ禍の「夜の街」を支えて』(甲賀香織、2022年、ちくま新書),p63-64

*4 『日本水商売協会-コロナ禍の「夜の街」を支えて』,p61-62

*5 『DATAHOUSE BOOK 011 シノギの手口』(夏原武、2003年、データハウス), p56-57

*6 『日本水商売協会-コロナ禍の「夜の街」を支えて』,p65

*7 『日刊ゲンダイ』2023年1月16日「この業界のお金事情 デリヘル嬢の巻①」(川田拓也)

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