国債の発行市場では「最高落札利回り」という言葉があります。2026年1月14日、財務省は「5年物国債入札」を実施、結果「最高落札利回り」は1.650%となりました(*1)。前回(2025年12月)の5年物国債入札において、最高落札利回りは1.444%でした(*1)。最高落札利回りは上昇しました。
国債とは「国(政府)」が発行する債券のことです(*2)。ちなみに国や地方公共団体等が発行する債券は「公共債」、民間機関が発行する債券(社債等)は「民間債」と呼ばれています(*2)。
利回りとは「投下元本が一定期間に生み出す収益の割合」のことです(*3)。「1年あたりの利回り」は、「年利回り」(年利)と呼ばれます(*3)。通常、利回りとは「年利回り」のことを指しています(*3)。債券における投下元本とは「購入価格」になります。
例えば、鯉登興業という企業が5年物の社債を発行したとします。その社債の購入価格は95万円、額面(満期時の払い戻し額)は100万円、クーポン(表面利率)は3%です(*4)。このクーポン3%は額面(この場合100万円)に対する利率であり(*4)、つまり1年あたり3万円が社債購入者に配当されます。満期(5年後)まで持ち続けた購入者には、クーポン総額15万円(3万円×5年)が配当され、また額面の100万円が払い戻されます。社債購入者は、社債購入にあたって95万円を支出しています。
購入者(満期まで持ち続けた場合)は「115万円」(クーポン15万円+額面100万円)を得て、「95万円」を支出する為、購入者の収益(5年間)は20万円となります。この収益(20万円)を1年あたりに直すと4万円になります。購入者にとって「鯉登興業 5年物の社債」は1年あたり4万円の収益を生み出しています。年利回りは、〔1年あたりの収益÷投下元本(購入価格)〕×100の計算式で、求められます(*4)。年利回りは4.210%(〔4万円÷95万円〕×100)となります(少数第三位未満切り捨て)。
話を「利回り」から「国債」に戻します。国債の発行市場では、日銀が政府(財務省)に代わり発行業務をします(*5)。入札参加者らは「希望購入価格」を提示します(*1)。国債は「希望購入価格の高い順」に落札されていき、所要額に達したところで落札は終了します(*5)。所要額に達した時点の価格(最後に落札できた者の提示した「希望購入価格」)が、「最低落札価格」となります(*1)。
債券価格は、すべて「額面100円あたりの価格」として示されます(*6)。額面100円の国債を103円で購入した場合と、101円で購入した場合とでは、年利回りは異なります。仮にクーポン(表面利率)1%、期間5年として、その債券を満期(5年後)まで持つとした場合で、それぞれの年利回り(最終利回り)を求めていきましょう。クーポンは額面(100万円)に対するものなので、1年あたりでは1円となり、5年間では5円になります。
103円で購入した場合、出ていくのは「103円」で、入ってくるのが「105円」(クーポン総額5円+額面100円)となり、購入者の収益は2円となります。この収益(2円)を1年あたりに直すと0.4円になります。購入者にとって、5年物の国債が1年あたり0.4円の収益を生み出しています。年利回りは0.388%(〔0.4円÷103円〕×100)となります(少数第三位未満切り捨て)。
一方、101円で購入した場合、出ていくのは「101円」で、入ってくるのが「105円」(クーポン総額5円+額面100円)となり、購入者の収益は4円となります。この収益(4円)を1年あたりに直すと0.8円になります。購入者にとって、5年物の国債が1年あたり0.8円の収益を生み出しています。年利回りは0.792 %(〔0.8円÷101円〕×100)となります(少数第三位未満切り捨て)。
「103円で購入した者」の年利回りは0.388%で、「101円で購入した者」の年利回りは0.792 %です。つまり「103円で購入した者」に比し、「101円で購入した者」の年利回りの方が高いです。安く購入することが、高い利回りを得ることにつながるのです。国債の発行市場においては最低落札価格で落札できた者が、最も高い利回り(最高落札利回り)を得られます。
先述したように2026年1月14日、5年物国債入札が実施され、最高落札利回りは1.650%となりました。前回(2025年12月)の最高落札利回りは1.444%であり、最高落札利回りは上昇しました。「最高落札利回りの上昇」は、「最低落札価格の下落」を意味します。前回(2025年12月)に比し、5年物の国債の最低落札価格は下落したのです。
最低落札価格の下落は、入札参加者らの間で「国債は安く買える」という空気が醸成されていることを物語っています。国債の需給は緩和しているのです。つまり2025年12月に比し、2026年1月において、5年物国債の需給は緩和したことが分かります。
逆に「最高落札利回りの低下」は、「最低落札価格の上昇」を意味します。最低落札価格の上昇は、入札参加者らの間で「国債は高い価格でしか買えない」という空気が醸成されていることを物語っています。国債の需給は逼迫しているのです。
国債の発行市場において「平均落札価格」と「最低落札価格」の差(テール)は、小さい方が「好調」とされています(*1)。また「応札倍率」という言葉があります(*1)。応札倍率は、「応札額」÷「落札額」の計算式で、求められます(*1)。
<引用・参考文献>
*1 日本経済新聞2026年1月15日「5年債落札利回り 最高1.650%、日銀利上げ観測で」
*2 『全訂版 なぜ金利が上がると債券は下がるのか?』(角川総一、2024年、ビジネス教育出版社), p76-77
*3 『全訂版 なぜ金利が上がると債券は下がるのか?』, p47
*4 『全訂版 なぜ金利が上がると債券は下がるのか?』, p55-56
*5 『全訂版 なぜ金利が上がると債券は下がるのか?』, p113
*6 『全訂版 なぜ金利が上がると債券は下がるのか?』, p150
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