近年メキシコ麻薬カルテルの存在感が増しています。理由の一つとしては、名目GDP(国内総生産)世界一位のアメリカに近年最も麻薬を密輸しているのが、メキシコ麻薬カルテルだからというのがあります(*1)。メキシコ麻薬カルテルは、アメリカと深く結びついていることが分かります。表の経済面においてもメキシコとアメリカは1990年代以降、深く結びつくようになりました。
1994年メキシコは、アメリカとカナダとの間ですでに結ばれていた自由貿易協定(1989年)に加わりました(*2)。三カ国による自由貿易協定は「北米自由貿易協定」(NAFTA)と呼ばれ、NAFTAは1994年発効されました(*2)。
NAFTAでは文字通り、自由貿易の促進が図られ、三カ国間の関税がなくなりました(*2)。NAFTA発効以前から、アメリカの大企業はメキシコに対し「安価な労働力」を期待していました(*2)。アメリカの大企業にとって、同一商品の製造でも、アメリカ国内の労働者に支払う人件費に比し、メキシコ国内の労働者に支払う人件費は低く済みます。つまりアメリカの大企業はメキシコに工場を作れば、製造費用を低くできました。
加えてNAFTA発効以後、関税がなくなったので、アメリカの大企業にとって、メキシコ工場における製造費用はさらに低くなりました(*2)。NAFTA発効後、メキシコとアメリカの貿易額は増加しました(*3)。
またNAFTAの特徴としては、排他性がありました。三カ国以外の国のメーカーがメキシコに工場を作りアメリカやカナダに輸出した場合には、「関税」がメーカーに適用されました(*2)。NAFTAは、三カ国以外の国に「NAFTAの非関税」を利用させない仕組みとなっていました。
<引用・参考文献>
*1 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』(ヨアン・グリロ著、山本昭代訳、2014年、現代企画室), p344
*2 『貿易の世界史 ―大航海時代から「一帯一路」まで』(福田邦夫、2020年、ちくま新書), p298-300
*3 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』, p114
コメント