日本國粋会と港会が生まれた背景

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 太平洋戦争終了から十数年後、関東のヤクザ社会において、各々のヤクザ組織は独立して活動するのではなく、各々の組織が集う形の大きな組織を作り始めていきました。1958年、関東に連合型の大組織が2つ誕生しました(*1) (*2)。2つとは「日本國粋会」と「港会」でした。日本國粋会は「生井一家」や「落合一家」等が参加し、結成されました(*1)。

 日本國粋会の後継組織は、現在の山口組2次団体「國粋会」と「落合金町連合」です。1991年日本國粋会は「國粋会」に改称しました(*1)。2005年國粋会は山口組の傘下に入り、2011年國粋会から落合金町連合が2次団体に内部昇格し、現在に至ります(*3) (*4)。

 國粋会は、山口組の傘下に入った後も、國粋会内部では連合型の組織形態を維持していました(*5)。しかし2007年國粋会は組織形態を、國粋会を上位団体とする垂直型に改めました(*5)。

 一方の港会は、「住吉一家」を軸として関東の博徒組織、テキヤ組織計28団体により結成されました(*2)。港会の後継組織は、現在の住吉会です。中核組織の住吉一家は名前の通り、東京の住吉や芝浦を縄張りとした組織でした(*6)。1958年当時、住吉一家のトップだったのが阿部重作です(*6)。

 住吉一家内からは、住吉会2次団体の「向後睦会」や「大日本興行」が生まれていきました(*2)。連合組織の港会初代会長には、住吉一家トップの阿部重作ではなく、「幸平一家」トップの青田富太郎が就任しました(*2)。幸平一家も東京に大きな縄張りを持つ組織であり、連合型の港会においては、住吉一家と同等の立場にありました。

 その後1964年に、港会は「住吉会」に改称しました(*7)。しかし同年住吉会は“頂上作戦”と呼ばれる警察庁の厳しい取締りを受け、一旦解散しました(*7)。1969年「住吉連合」の名称で組織が復活、1982年「住吉連合会」、1991年「住吉会」と改称して現在に至っています(*7) (*8)。

 1991年住吉会は組織形態を「連合型」から「垂直型」に改めました(*8)。ただし1998~2014年の間、住吉会は連合型の組織に戻りましたが、各団体は住吉一家の傘下団体となる形で垂直型の組織形態が維持されました(*9)。2014年以降、現会長の関功の就任に伴い、住吉会は再び垂直型の組織形態となりました(*10)。

 日本國粋会と港会が結成された背景には、ライバル組織の勢力拡張がありました。太平洋戦争後、構成員1万人以上を抱えるまでに、関東圏で勢力を拡大したのが「関根組」でした(*11)。1936年関根組は結成され(*11)、関東圏の土建業に大きな影響力を及ぼしていました(*12)。1949年GHQは関根組の勢力拡大を危惧し、関根組を解散に追い込みました(*11)。

 関根賢(関根組の結成者)は、その後ヤクザ社会から引退し、建設会社の経営者になりました(*11)。1953年藤田卯一郎が、旧関根組の勢力を集め、「松葉会」を結成しました(*13)。藤田卯一郎は関根賢の部下でした(*13)。

 戦後、既存の博徒組織やテキヤに属さない不良集団いわゆる愚連隊が首都圏や関西圏の都市部で誕生し、積極的に活動していきました。

 東京においては、在日2世である町井久之をトップとする愚連隊が在日朝鮮人を主なメンバーとして、既存のヤクザ組織と対抗していました(*14)。1957年町井久之の率いた愚連隊は「東声会」に改称しました(*14)。

 また神奈川県では「稲川組」(現在の稲川会)が勢力を拡張させていました(*15)。日本國粋会と港会に集った各々のヤクザ組織には、松葉会や東声会、稲川組に対抗する意味合いもあったと考えられます。

 テキヤ組織も同様の動きを見せました。1961年「関口一門」(関口愛治系統のテキヤ組織群、その系統の一人親方群)等のテキヤ組織が集い、「極東愛桜連合会」を結成しました(*16)。極東愛桜連合会に集ったテキヤ組織も、ライバルのヤクザ組織に対抗する意味合いがあったと考えられます。

<引用・参考文献>

*1 『山口組 分裂抗争の全内幕』(盛力健児+西岡研介+鈴木智彦+伊藤博敏+夏原武、2015年、宝島社), p220

*2 『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』(別冊宝島編集部編、2016年、宝島社), p130-131

*3 『山口組 分裂抗争の全内幕』, p223

*4 『六代目山口組10年史』(2015年、メディアックス), p79

*5 『実話時代』2015年10月号, p21

*6 『実話時代』2016年8月号, p38

*7 『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社), p159

*8 『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』, p132-133

*9 『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』, p30-31

*10 『実話時代』2016年9月号

*11 『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』, p20-21

*12『ヤクザ1000人に会いました!』(鈴木智彦、2012年、宝島SUGOI文庫), p143

*13 『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』, p208-209

*14 『実話時代』2016年12月号, p32-33

*15『日本のヤクザ100人 闇の支配者たちの実像』, p16-17

*16 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』(実話時代編集部編、2003年、三和出版), p13-14

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