ショバ代

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  ショバ代とは、高市(たかまち)における「露店の場所使用料」のことを指しました(*1)。

 高市とは、社寺の祭礼や縁日に仮設される露店市のことでした(*2)。高市のほとんどは、1年ごともしくは1カ月ごとに開催された定期門前市でした(*2)。

 出店者は高市における「露店営業の対価」として、庭主(にわぬし) (*3)にショバ代を払いました(*1)。庭主は、その高市を仕切るテキヤ組織の親分であり、露店配置の裁量権を有していました(*3)。庭主はかつて「帳元」(「出店を帳面につける元締め」という意味)と呼ばれていました(*4)。元締めは「親分」という意味です。

 庭主は各出店露店商からショバ代を徴収し、そこから「奉納金」という名の場所使用料を社寺に払っていました(*5)。高市では、「出店露店商」→「庭主」→「社寺」の経路で場所使用料は流れていきました。

 各出店者のショバ代は概ね、高市の総経費÷出店数で求められました(*6)。「長崎くんち」(諏訪神社の秋季大祭)では1977年まで長崎神農会(地元露店商の組織)が露店配置決めをしていました(*7)。長崎くんちは、10月7~9日の3日間、開催されていました(*7)。当時、長崎くんちのショバ代は、1店舗あたり6千円でした(*7)。

 1977年時の長崎神農会の統計によれば「1名義当りの出店数」は3.7店舗でした(*8)。一人の露店商が平均して3.7店舗を出していたことになります。もしAという露店商が3店舗を出していたら、ショバ代の合計は1万8千円になりました。またBという露店商が4店舗を出していたら、ショバ代の合計は2万4千円になりました。

 高市の開催時(もしくは開催前後)、「芳賀帳」(通称:面帳)が各露店商に回ってきました(*9)。面帳は「めんちょう」と呼ばれていました(*9)。

 この芳賀帳は「奉願帳」とも記されました(*10)。芳賀帳(奉願帳)はいわば「寄付帳面」でした(*10)。「病気、事故、怪我等により高市に来られなかった露店商仲間への見舞金」として寄付が募られました(*10)。

 まず庭主(資料では「土地の神農会の会長」)が、他団体から2~3人を「世話人」として選出しました(*9)。世話人として選出された者らは、高市に出店する露店商らに芳賀帳を回し、寄付を募りました(*9)。高市の開催時、当然ですが、多くの露店商が集まる為、寄付を募るには良い機会だったのです(*9)。芳賀帳が回り終わった後、先述の世話人として選出された者らが、寄付金を集計し、寄付金を庭主に渡しました(*9)。そして庭主が、該当の露店商(病気、事故、怪我等により高市に来られなかった露店商)に寄付金を「見舞金」として提供しました(*9)。

 しかし時には、寄付金全額が該当の露店商には行かず、寄付金の一部が取られていた場合もありました(*10)。

 戦前(1941年以前)、テキヤ組織の構成員においても「臨時費用」がありました(*11)。当時は臨時費用は「ヅメ」と呼ばれていました(*11)。

 1985年頃北関東のM市の初市では、ショバ代は5千円でした(*12)。このM市の初市では1986年、地元のテキヤ組織が露店配置決めをしていました(*13)。

 2012年の情報では、テキヤ業界における関東のショバ代は1万円(1日)、関西は1万5千円(1日)といわれていました(*14)。

 一方、庭主ではなく、警察組織が露店配置決めをする場合もありました。警察組織による露店配置決めは「サツ割り」と呼ばれました(*7)。

 昭和和四十年代(1965~1974年)北海道全域では警察組織が高市において露店の配置決めをしていました(*15)。

 仙台の七夕祭りでも警察組織が露店の配置決めをしていました(*16)。

 先述の長崎くんちにおいても、後に長崎警察署が長崎神農会に代わり、抽選方式で露店配置決めを行いました(*17)。

 また警察組織は「申請の受付順」に出店場所を割り振る方法もとっていました(*16)。

<引用・参考文献>

*1 『裏社会の日本史』(フィリップ・ポンス、安永愛 訳、2018年、ちくま学芸文庫), p494

*2 『盛り場の民俗史』(神崎宣武、1993年、岩波新書), p44

*3 『ヤクザに学ぶ 伸びる男 ダメなヤツ』(山平重樹、2008年、徳間文庫), p157

*4 『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社),p51

*5 『裏社会の日本史』, p493

*6 『盛り場の民俗史』, p45

*7 『香具師はつらいよ』(北園忠治、1990年、葦書房),p233

*8 『香具師はつらいよ』,p250-251

*9 『香具師はつらいよ』,p128-129

*10 『テキヤのマネー学』(監修:仲村雅彦、取材・構成:高橋豊、1986年、東京三世社),p97

*11 『社会学選書⑪ 露店研究』(横井弘三、2021年、いなほ書房),p14

*12 『テキヤのマネー学』,p14,25

*13 『テキヤのマネー学』,p26-32

*14『GEKIDAS 激裏情報@大事典vol.5』(激裏情報、2012年、三才ブックス), p82

*15 『香具師はつらいよ』,p258

*16 『テキヤのマネー学』,p56-57

*17 『香具師はつらいよ』,p241

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