博徒系組織にとって違法賭博が主要稼業だった時代(1964年以前)、東日本で流行った種目としてバッタマキがあります(*1)。1964~65年頃、警察当局は違法賭博に関わった者を、非現行でも後日検挙できるようになりました(*2)。現行犯でしか検挙できなかった以前に比べて、検挙は格段にしやすくなりました。
検挙体制の変更は、違法賭博を主要な稼業とする博徒系組織に大打撃を与えました(*2)。1965年以降、博徒系組織にとって、違法賭博のみを収入源として活動することが困難になっていきます。多くの博徒系組織は収入源の多様化を迫られました。
バッタマキは花札を用いて行われます(*1)。白い布が敷かれた盆ゴザの上に、3枚1組で計2組(計6枚)の札が置かれます(*3)。中盆側の3枚は「サキ」、客側の3枚は「アト」と呼ばれます(*3)。花札の各札は、1~12月の月数を持っています(*4)。
松が描かれた札は「1月」、芒が描かれた札は「8月」を意味しています。バッタマキは、札月数の加算を利用した種目です。1月=松、2月=梅、3月=桜、4月=藤、5月=菖蒲、6月=牡丹、7月=萩、8月=芒(坊主)、9月=菊、10月=紅葉、11月=柳(雨)、12月=桐、という柄と月数の関係になっています(*4)。
バッタマキは、3枚の月数を合計して、目(点数)を決定します(*3)。例えば3枚の札が「松」「梅」「桜」と出た場合、「松=1月」「梅=2月」「桜=3月」ということなので、月数を合計すると「6」という点数になります。客はサキとアトのどちらに高い点数が出るのかを予想して、お金を張ります(*3)。客にとって勝つ確率は1/2です。内容がシンプルな種目といえます。
バッタマキの最高点は9点です(*1)。バッタマキは二桁(十の位)を切り捨てています(*3)。例えば月数合計が13の場合、3点となります。サキが「松=1月」「桜=3月」「菖蒲=5月」で、アトが「牡丹=6月」「萩=7月」「芒=8月」の場合。単純に月数を合計するとサキ9、アト21となります。しかしバッタマキでは二桁を切り捨てるので、サキ9点、アト1点となります。この場合、サキに賭けた客の勝ちとなります。
<引用・参考文献>
*1 『ヤクザ大辞典』(山平重樹監修、週刊大衆編集部編、2002年、双葉文庫), p118-119
*2 『ヤクザ大辞典』, p108-109
*3 『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社), p195
*4 『賭けずに楽しむ日本の賭博ゲーム』(伊藤拓馬、2015年、立東舎), p34-35
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