コロンビア麻薬組織の1つであるメデジン・カルテルは1980年代初め、アメリカ合衆国にコカインを密輸する為、フロリダ州沿岸まで直接空輸していました(*1)。時のアメリカ合衆国のレーガン政権は1982年1月「南フロリダ特殊部隊」を設立させるなど、フロリダへの密輸対策を強化しました(*1)。フロリダ上空にはアメリカ合衆国の偵察機や武装ヘリコプターが飛び回るようになりました(*1)。メデジン・カルテルにとってフロリダ上空は「監視の強い領域」に変わりました。
フロリダ上空を避けてアメリカ合衆国にコカインを密輸する方法として、注目されたのがメキシコルートでした。アメリカ合衆国とメキシコは隣国同士で、国境は3,000kmもありました(*2)。すでにメキシコの麻薬密輸組織は両国国境を抜け、マリファナやヘロイン（アヘン）をアメリカ合衆国に密輸していました(*1) (*2)。ホンジュラス人のフアン・ラモン・マタ・バジェステロスが仲介役となり(*3)、メデジン・カルテルはメキシコのシナロア州の麻薬密輸組織と組むことになりました(*2)。メデジン・カルテルがシナロア州の麻薬密輸組織に「国境越え」という運送業務を外部委託した格好です。
当時シナロア州の麻薬密輸組織の「大ボス」として君臨していたのがフェリックス・ガジャルドでした(*1)。フェリックス・ガジャルドは1946年クリアカン（シナロア州の都市）で生まれ、警察官を経た後、麻薬密売の世界に入りました(*1)。フェリックス・ガジャルドはマリファナとアヘンをアメリカ合衆国に密輸する違法ビジネスを展開していきました(*2)。フェリックス・ガジャルドの登場以降、メキシコの麻薬密輸組織は「カルテル」と呼ばれるようになるなど、組織の規模・内容が洗練化されていきました(*2)。フェリックス・ガジャルドはメキシコ麻薬カルテルの「始祖」として位置づけられる人物です。
＜引用・参考文献＞
*1 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』（ヨアン・グリロ著、山本昭代訳、2014年、現代企画室）, p94-99
*2 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』（ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子/中島知子訳、2015年、河出書房新社）, p31-33
*3 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』, p86-87
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