船の運航において「往航」とは「目的地に向かう」時を指します。一方「復航」とは「目的地から帰る時」を指します。
海運ビジネスにおいて、往航及び復航の両方とも充分な貨物量を載せることが収益面において重要になります。
18~19世紀アメリカ合衆国の主要輸出品の1つとして綿花がありました(*1)。主な輸出先はイギリスでした(*1)。綿花は主にアメリカ合衆国南部大西洋岸の地域で栽培されました(*1)。しかし綿花の主要輸出港は、南部の港ではなく、北部のニューヨーク港でした(*1)。
イギリスの船は「往航時(目的地:アメリカ合衆国)」、綿製品や機械類を輸送しました(*1)。綿製品や機械類は大都会でより多く消費されたと考えられます。よってイギリスとしてはアメリカ合衆国の中でもニューヨークに輸送することは賢明な判断といえます。
一方イギリスの船は復航時、綿花をイギリスに持ち帰っていました(*1)。もし綿花の主要輸出港がアメリカ合衆国南部だった場合、イギリス側は往航時の貨物選びに悩んだでしょう。イギリスの船が往航時貨物を載せずに、アメリカ合衆国南部の港に直接行き、復航で綿花を持ち帰っていては、海運ビジネス上、採算が合わなかったはずです。
よってアメリカ合衆国側は綿花輸出促進の為に、チャールストン(サウスカロライナ州)等の南部の港から綿花をニューヨーク港に輸送していました(*1)。
<引用・参考文献>
*1 『港の世界史』(高見玄一郎、2021年、講談社学術文庫), p322-323
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