1990年代後半アメリカ合衆国系バイカーギャング「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s Angels)のイギリス勢と南アフリカ勢は手を組み、マリファナ(乾燥大麻)密輸ビジネスを手掛けていました(*1)。まず南アフリカのヨハネスブルク支部がマリファナ1kgを20ポンドで購入し、イギリスに送りました(*1)。当時のイギリスではマリファナ1kgは3,000ポンドで売ることができました(*1)。南アフリカでは「20ポンド」の価値だったマリファナは、イギリスに渡ることで「3,000ポンド」の価値に変わったのです。
現在の日本ではマリファナ1gは小売価格5,000~7,000円で売られています(*2)。1kgに直すと、5,000万~7,000万円になります。またジョイント(タバコ状のマリファナ)1本に約0.5gのマリファナが用いられています(*3)。1kgマリファナはジョイント約2,000本に相当します。
密輸方法の1つとしては、錬鉄製家具の中にマリファナを隠す方法が用いられました(*1)。両者(イギリス勢と南アフリカ勢)は密輸目的の為に、会社を2つ設立しました(*1)。1つはスワジランド(現在のエスワテイニ)の食品会社で、もう1つがヨハネスブルクの家具会社でした(*1)。「マリファナ入りの錬鉄製家具」はイギリスに輸出されました(*1)。つまり「ヨハネスブルクの家具会社がイギリスに錬鉄製家具を輸出する」という設定が表向き組まれていたのです。1998年11月、密輸チームメンバーの逮捕により、マリファナ密輸は明らかにされました(*1)。
<引用・参考文献>
*1 『Angels of Death: Inside the Bikers’ Global Crime Empire』(William Marsden&Julian Sher,2007,Hodder & Stoughton), p287-288
*2 『スマホで薬物を買う子どもたち』(瀬戸晴海、2022年、新潮新書), p235
*3 『スマホで薬物を買う子どもたち』, p227
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