バイカーギャングのヴァイキングズ(Vikings)は、自身の公式サイトによれば、イングランド南東部のサリーで1969年結成されました(*1)。結成当初の組織名は「ヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズ・モーターサイクルクラブ」(Hells Angels Vikings M.C.)で、略して「HAVMC」でした(*1)。ヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズは、同名のアメリカ合衆国系「ヘルズ・エンジェルス」(1948年カリフォルニア州サンバーナーディーノで結成)(*2)とは関係を持たない別の組織でした(*1)。
おそらくヴァイキングズ側がアメリカ合衆国のヘルズ・エンジェルスに対し無許可で「ヘルズ・エンジェルス」という名前を採用したのだと考えられます。アメリカ合衆国のヘルズ・エンジェルスからすると、ヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズは「非公認のヘルズ・エンジェルス」と映っていたのでしょう。
1973年サリーのヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズ構成員4人がアイルランドに渡り、同国で初の支部を設立しました(*1)。また2年後の1975年アイルランド首都・ダブリン(レンスター地方)にヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズは支部を設立しました(*1)。アイルランドではカーロウ(レンスター地方)、ウェックスフォード(レンスター地方)、コーク(マンスター地方)でもヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズの支部が設立されました(*1)。
1980年ヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズは「ヴァイキングズ」に改称しました(*1)。改称前、ヘルズ・エンジェルス(厳密に言えばイギリスの勢力)がヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズに対し自陣に入ることを求めました(*1)。しかしヘルズ・エンジェルス・ヴァイキングズは拒否し、独立路線を明確に打ち出したことが、改称の背景にはありました(*1)。
先述したヴァイキングズのアイルランド勢は、地元の他団体ともに「アイルランド同盟」(Alliance Ireland)を結成しました(*3)。アイルランド同盟結成の目的は、他国バイカーギャング(特にアメリカ合衆国のヘルズ・エンジェルス)からの干渉を防ぐことでした(*3)。アイルランド同盟は「反ヘルズ・エンジェルス同盟」ともいえました(*3)。
2023年時点でヘルズ・エンジェルスはアイルランドにノマド支部(2011年設立)のみを置いています(*4)。また北アイルランド(イギリス領)にも支部(2007年設立)が1つあります(*5)。つまり2023年時点アイルランド島では2支部が活動しています。
ヘルズ・エンジェルスはアイルランド島に2つの支部(ダブリン郊外、北アイルランドのアーマー)を置いていました(*6)。しかし後に2支部は重装備の集団により襲撃された結果、閉鎖を余儀なくされました(*3)。ヘルズ・エンジェルスは一度アイルランド島から撤退したのです(*3)。進出地域での支部閉鎖はヘルズ・エンジェルスにとって史上初の出来事でした(*3)。
ヘルズ・エンジェルス撤退後にアイルランド同盟は結成されました(*3)。アイルランド同盟には先述のヴァイキングズに加えてデビルズ・ディサイプルズ(Devil’s Disciples )、フリーホイーラーズ(Freewheelers)、ロード・トラップス(Road Tramps)、チョーズン・フュー(Chosen Few)が参加しました(*3)。
<引用・参考文献>
*1 ヴァイキングズのサイト「歴史」
http://78.128.99.45/vikings-sussex/History.html
*2 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin),p24
*3 『Outlaws: Inside the Hell’s Angel Biker Wars』(Tony Thompson,2012,Hodder Paperback), p131-132,348
*4 ヘルズ・エンジェルスのサイト「アイルランドの支部」
https://hells-angels.com/area/ireland/
*5 ヘルズ・エンジェルスのサイト「ヨーロッパの支部」
*6 『Outlaws: Inside the Hell’s Angel Biker Wars』, p125
コメント