中米ホンジュラスのアウトロー組織「バジェス」(Valles)は、主に同国のコパン県で活動してきました(*1)。コパン県はグアテマラと接しています。
図 ホンジュラスの地図(出典:Googleマップ)
バジェスはコカインを「南米側(生産側)」から「メキシコ側」に輸送することで、収益を上げていました(*1)。バジェスはメキシコ側においては特にシナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)と深いつながりを持っていました(*1)。
ニカラグアと接する「グラシアス・ア・ディオス県」から上記の「コパン県」に至る経路は「コカインの国際的密輸経路」(通称:死の道)でもありました(*1)。
メキシコに輸送されたコカインの多くは、アメリカ合衆国に送り込まれたはずです。バジェスはコカイン輸送の「つなぎ役」として機能していたと考えられます。
バジェ・ファミリー(Valle family)がバジェスを率いてきました(*1)。バジェ・ファミリーの中でも、ミゲル・アルヌルフォ・バジェ・バジェ(Miguel Arnulfo Valle Valle)、弟のルイス・アルフォンソ・バジェ・バジェ(Luis Alfonso Valle Valle)らが指導的役割を果たしていました(*1)。
ミゲル・アルヌルフォの兄弟であるホセ・レイネリオ・バジェ・バジェ(Jose Reynerio Valle Valle)も重要人物で、資金洗浄で大きな役割を果たしていたといわれています(*1)。
バジェ・ファミリーは、違法薬物輸送の他に、不動産業も営んでいました(*1)。バジェ・ファミリーは、コパン県の県都などにホテルや不動産を所有していました(*1)。
加えてバジェスは武器密輸や資金洗浄も手掛けていたようです(*1)。アメリカ合衆国の銃器はホンジュラスに密輸されていました(*2)。ホンジュラスでは主に拳銃(handguns)が流通していました(*2)。
2014年10月ミゲル・アルヌルフォ・バジェ・バジェ、弟のルイス・アルフォンソ・バジェ・バジェは逮捕され、同年12月アメリカ合衆国に引き渡されました(*1)。また2019年2月ホンジュラス当局は、ホセ・レイネリオ・バジェ・バジェを逮捕したと発表しました(*1)。
またホンジュラスでは「アトランティック・カルテル」 (Atlantic Cartel)というアウトロー組織も違法薬物ビジネスをしていました(*3)。ウィルテル・ネプタリ・ブランコ・ルイス(Wilter Neptalí Blanco Ruíz)がアトランティック・カルテルを率いていたといわれています(*3)。
アトランティック・カルテルは、グラシアス・ア・ディオス県のラ・モスキティア地域(ホンジュラス北東部の大西洋沿岸)を主な活動拠点としていました(*3)。加えてアトランティック・カルテルはホンジュラス国内の他地域でも活動していたといわれています(*3)。
<引用・参考文献>
*1 InSight Crimeサイト「Valles」(InSight Crime,2020年3月9日)
https://insightcrime.org/honduras-organized-crime-news/honduras-los-valles
*2 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』(Ioan Grillo,2021,Bloomsbury Publishing Plc),p266
*3 InSight Crimeサイト「Atlantic Cartel」(InSight Crime,2017年8月28日)
https://insightcrime.org/honduras-organized-crime-news/atlantic-cartel-profile
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