8月29日配信の朝日新聞記事によると、8月29日午前和歌山県和歌山市の土木建築会社の社内で、従業員1名死亡、3名重傷に至る発砲事件が起きました。犯人と疑われる人物は同社経営者の次男、被害者は同社従業員です。
猟銃所持を除き、拳銃所持が法律上認められない日本において、拳銃絡みの事件はヤクザ組織が関与していることが多いです。殺人や傷害を伴わない威嚇的な発砲事件でさえも、「ヤクザ組織による攻撃」であることを相手側及び第三者に如実に知らしめることができます。ヤクザ組織にとって、「メッセージ性の高い武器」として、拳銃は重宝されてきました。
日本における拳銃の売買取引は、ヤクザ組織を主要者として、裏社会の領域で行われています。拳銃はまず密輸入という形で、外国から入ります。ロシア、中国、フィリピンなどが主な輸入国となっています。ヤクザ社会で出回っている自動拳銃として、トカレフとマカロフがあります(*1)。トカレフは、ロシアの前身国であるソ連の軍隊で発明されて、後に中国でコピー品が製造されました(*1)。マカロフもソ連軍により発明されました。マカロフはトカレフより、精度が高く、扱いやすいとされています(*1)。ロシアと中国にいるヤクザ組織に通じる者が日本のヤクザ組織にトカレフとマカロフを送っていることが窺い知れます。フィリピンの場合、マニラ近郊に密造拳銃の工場が多数あります(*2)。フィリピンはヤクザ組織に属する者が入国しやすい国です(*2)。密造拳銃の工場の地下射撃場で射撃に励むヤクザ関係者もいるという話があります(*2)。フィリピンから密造拳銃を輸入する動きがあるのです。
拳銃の売買は、罰則が厳しいゆえに、知らない相手とは取引はなされません(*1)。価格は、「口径×2」が相場とされています(*1)。口径が大きくなるほど、価格が高くなる仕組みです。拳銃の場合、口径が大きいほど、殺傷能力が上がるからです(*1)。回転式拳銃のスミス&ウェッソン38口径の場合、「38×2」の計算式により、実弾付きの価格が70万円以上で売買されています(*1)。回転式拳銃は、自動拳銃に比べて、故障が少なく人気があります(*1)。先述の自動拳銃のトカレフは20~30万円、マカロフは50万円以上という相場になっています(*1)。当然、需給により、拳銃の価格が変わります。抗争が始まれば、拳銃の価格は高騰します。
警察当局による組事務所への家宅捜索を踏まえると、ヤクザ組織は購入した拳銃を組事務所以外に保管しなければなりません。ヤクザ組織がとっている方法として、山に穴を掘り埋める、グリース漬けにしてビニール袋にいれ川に沈めるという保管方法や貸倉庫の利用などがあります(*3)。グリースを利用した場合、拳銃は長期にわたり錆びず、ガソリンで洗い流せば即利用することができるようです(*3)。射撃訓練場所としては、海沿いの地域であれば船に乗り沖で、猟期(11月半ば以降)の地方の山が利用されます(*4)。
<引用・参考文献>
*1 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p193~195
*2 『ヤクザ1000人に会いました!』(鈴木智彦、2012年、宝島SUGOI文庫), p62~63
*3 『日刊ゲンダイ』2016年3月18日号(17日発行)
*4 『週刊アサヒ芸能』2015年10月29日号, p40~41
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