偽装分裂~新団体は神戸山口組の別動隊という可能性について考えてみた

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 近年のヤクザ組織において、偽装破門の増加が指摘されています(*1)。ヤクザ組織の追放を意味する破門処分を偽装的に出すメリットとして、破門処分の元組員が「一般人」になれることがあります。実際元組員は、暴対法や暴排条例の「5年ルール」により、5年間は規制の対象とされます(*2)。元組員は、金融機関で口座を作れないなど、5年間極めて不自由な生活を強いられます(*2)。しかしながら「組織を離れた」と見なされる為、警察当局のマークは組員時代より緩くなります。偽装破門された元組員は、組織の命令を何らかの形で受けながら、「一般人」になったことで取得できたメリットを活用しつつ裏稼業に精を出していくことになります。別働隊として活動するのです。仮に捕まっても、「組織から離れている者」である以上、組織に捜査の手は及びません。

 本日4月30日、神戸山口組から脱退した勢力が新団体を立ち上げました。2015年8月の神戸山口組結成以降、執行部の一員として活動し、時には全国各地に足を運び組員を激励するなどして、一躍時の人となった織田絆誠が新団体の中心人物です。織田絆誠が一転して組織を割ったことに関して、意外と捉える向きがあるでしょう。神戸山口組そして織田絆誠が立ち上げる新団体にとっても、今回の分裂はマイナスです。神戸山口組にとっては「神戸山口組の広報マン」的存在だった織田絆誠を失うのはあらゆる面で手痛いです。ヤクザ稼業はイメージ商売の側面もあります。裏稼業や人材リクルートの場面で「織田絆誠」とい名前はブランドとして効いていました。一方織田絆誠にとっても、今回の行為により、大きな打撃を受けます。『最新ビジュアルDX版! 山口組分裂「六神抗争」365日の全内幕』(宝島特別取材班編、2016年、宝島社)のインタビューにおいて、織田絆誠は義理堅さや礼節さを感じさせる発言をしていました (*3)。しかし今回の行為は、結果的に神戸山口組及び山健組組長の井上邦雄を裏切ることになってしまいました。織田絆誠のイメージダウンは避けられません。得をするのは山口組側です。

 なぜ織田絆誠はマイナスになることを選択したのでしょうか。人事面での揉め事があったという話も聞こえてきます。

 1つの可能性として、「偽装分裂」をしたとは考えられないでしょうか。「神戸山口組の別動隊」としての役割を果たす為に、新団体は結成されたという可能性です。組織的犯罪処罰法と民法の使用者責任を用いることで、現在日本の司法は抗争事件においてヤクザ組織の上層部を逮捕及び長期刑に処することができます(*4)。2008年埼玉抗争における敵対組員殺害の件で、山口組2次団体の小西一家トップの落合勇治に、無期懲役の判決が下っています(*4)。神戸山口組側が山口組側に武力抗争を仕掛ければ、井上邦雄にまで累が及ぶことは充分にありえることです。しかしながら沈黙を保っていても、戦況は変わりません。戦況を打開するため、そして井上邦雄に累が及ぶことを避けるために、織田絆誠は今回「偽装分裂」に至ったという可能性はないでしょうか。この説をとると、山口組側への攻撃が近いことを意味します。2016年5月31日、神戸山口組2次団体・池田組の若頭が弘道会組員に射殺されています。神戸山口組側としては、報復に至らず、現在に至っています。もちろんこの説は警察当局もそして山口組側もすでにとっているはずです。山口組側への警備も厳戒態勢でとってくるはずです。危険な水域に入ってきたのかもしれません。

<引用・参考文献>

*1 『新装版 ヤクザ崩壊 半グレ勃興―地殻変動する日本組織犯罪地図』(溝口敦、2015年、講談社+α文庫), p208-209

*2 『実話時代』2016年4月号, p93

*3 『最新ビジュアルDX版! 山口組分裂「六神抗争」365日の全内幕』(宝島特別取材班編、2016年、宝島社), p52-77

*4 『最新ビジュアルDX版! 山口組分裂「六神抗争」365日の全内幕』(宝島特別取材班編、2016年、宝島社)「弘道会と山健組の衝突を招いたカネと暴力のバランスシート!」(猫組長), p140-141

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