博徒組織が催していた賭博ゲームの1つに、手本引があります。手本引は主に関西で行われていた賭博ゲームです(*1)。「一」「二」「三」「四」「五」「六」の6枚の札が用いられます(*1)。胴師(親)は半纏をはおり、半纏の中で6枚から1枚を選びます(*1)。6枚札は数字順に重ねられています(*2)。胴師は「選んだ札」を6枚の一番上にして、手拭いの中に入れます(*2)。客が張った後、胴師は手拭いを開いて「選んだ札」を公開します(*2)。例えば胴師が「四」を選んだとすると、「四」を6枚の一番上にして、手拭いの中に入れます。6枚札の順番は上から「四」「五」「六」「一」「二」「三」となっています。客は最大で4つの数字まで張れます(*1)。
胴師が扱う札は「繰り札」、客が扱う札は「張り札」と呼ばれています(*2)。「繰り札」は手のひらで扱いやすいよう、「張り札」より小さいサイズになっており、別名「豆札」とも呼ばれています(*1)。胴師は半纏の中で繰り札を順番に入れ替えて、「選んだ札」を6枚の一番上にします(*2)。入れ替えの際、一~六の数字順を壊して入れ替えてはいけません(*2)。胴師のミスで繰り札の順番が崩れていた場合、例えば「四」を選んだ際上から「四」「六」「五」「一」「二」「三」の順になっていたら、客に対して賭け金の同額を胴元は支払わなければなりません(*2)。
また客はモク札によって、胴師の選択した札履歴を6回前まで遡って、確認することができます(*2)。モク札は6個あり、一~六の数字がそれぞれ記載されています(*2)。胴師から見て右端に位置しているモク札の数字は、直前(1回前)の繰り札の数字を表しています(*2)。一方、左端のモク札は、6回前の繰り札の数字を示しています(*2)。右端から左端に向かって、履歴を遡れるようになっています。客は張る際、モク札を参考にします。
モク札の提示は、繰り札(胴師の選択した札)の公開に先行します(*2)。手本引は、「胴師による繰り札の選択」→「客の張り」→「モク札の提示」→「繰り札の公開」という流れで進んでいきます。胴師のミスでモク札と繰り札の数字が異なっていた場合、例えばモク札が「三」で繰り札が「四」だった場合、「三」「四」ともに当たり扱いとなります(*2)。このような事態は「ウタイ損ない」と呼ばれます(*2)。ウタイ損ないの場合、繰り札数字(「本家」)には通常の配当、モク札数字(「ウソ」)には配当の半額が支払われます(*2)。2点張り以上で、「本家」「ウソ」両方が含まれていたら、配当の高い方で支払われます(*2)。
「胴師のミス」という要因が入り込んでいるのが手本引の特徴の1つといえます。
<引用・参考文献>
*1 『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社), p193
*2 『賭けずに楽しむ日本の賭博ゲーム』(伊藤拓馬、2015年、立東舎), p78-81
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