ヤクザ組織が手掛けるビジネスにおいても、流行り廃りがあります。廃りの代表例がノミ屋です。公営ギャンブルを主催する団体に代わり、公営ギャンブルの「胴元」になるのがノミ屋です。現在日本の公営ギャンブルは競馬、競輪、競艇、オートレースの4種目です。ノミ屋は賭け金を受け付け、公営ギャンブルの主催者と同様、公営ギャンブルの勝敗結果に応じた配当を行います。これまで公営ギャンブル利用者は、各公営ギャンブル施設に足を運び、馬券や車券、舟券を購入してきました。一方、ノミ屋を利用すると、ノミ屋に電話して買い目と金額を告げるだけで済みました。電話を介してのやり取りの為、集金や配当は後日になります。ノミ屋独自の「電話注文対応」は利用者にとって時間を節約できる有難いサービスでした。当然、ノミ屋を利用する行為は違法となります。
*今回記事を作成するにあたり『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版)、『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社)、『週刊SPA!』2016年5月24日号の情報を参考にさせて頂きました。
また控除率(テラ銭)の低さも、ノミ屋の魅力の一つでした。競馬の場合、実際の主催者であるJRAの控除率は25%です。一方、ノミ屋の場合、『現代ヤクザ大事典』(192P)によれば、控除率は15%ということです。券の割引販売、負け金のディスカウントといった形で、利用者には還元されました。一方、大穴対策として、当たり馬券の上限が設けられています。『裏経済パクリの手口99』(103P)によると、「中央競馬だと一万円、荒れる地方競馬は五千円といったぐあいだ」とのことです。さらに中小のノミ屋では対応できない大口注文が入った場合、大きなノミ屋が代わりに引受けて対応します。ノミ屋を運営する為には、集金力と莫大な資金、加えて裏社会のネットワークが必要となります。ヤクザ組織が適任となります。
しかし近年、公営ギャンブルがインターネット投票を導入したことにより、ノミ屋の「電話注文対応」の利点が消滅しました。『週刊SPA!』2016年5月24日号(30P)によれば、「ここ10年で最も大きな打撃を受けたのはノミ屋です」とのことで、ノミ屋ビジネスの厳しさを伝えています。
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