五代目渡辺芳則組長体制(1989~2005年)の「山口組」において、2次団体トップ(直参)の毎月支払う上納金(会費)額は変遷していました。五代目体制が開始した1989年から1994年7月の上納金は、月額「最高幹部・舎弟:105万」「直参:85万円でした(*1) (*2)。
1994年8月~1997年の上納金は、月額「最高幹部・舎弟:105万」「直参:65万円」でした(*1)(*2)。最高幹部・舎弟の上納金は据え置き、直参の上納金は減額されました。
1998年1月~2004年の上納金は月額「最高幹部・舎弟:70万」「直参:50万円」でした(*1) (*2)。最高幹部・舎弟、直参ともに減額されました。五代目体制開始時の1989年(「最高幹部・舎弟:105万」「直参:85万円」)から比較すると、最高幹部・舎弟の上納金は33%減、直参の上納金は41%減になっています。バブル崩壊以降の経済停滞の影響を山口組も受けたことが窺い知れます。
しかし2004年上納金は月額「最高幹部・舎弟:100万」「直参:80万円」に変更されました(*1)。1998~2004年に比べて、最高幹部・舎弟の上納金は43%増、直参の上納金は60%増になりました。経済の状況、山口組内での状況等、複合的な要因によって決定されたと考えられます。2005年以降の六代目体制においては、直参の上納金は月額85万円となりました(*3)。加えて直参は月額30万円の「積立金」も徴収されました(*3)。直参は毎月115万円を1次団体に払うことになったのです。
山口組脱退勢力の「神戸山口組」(2015年8月結成)は月額上納金を、役職30万円、中堅20万円、若中(役職なし、中堅ではない2次団体トップ)10万円に設定しました(*4)。一方、山口組は2015年11月5日の定例会にて上納金額の引き下げ(月額85万円からの引き下げ)を発表しました(*5)。山口組側は、傘下団体が上納金額の低さに惹かれて神戸山口組側に移籍することを危惧し、上納金額を引き下げたと考えられます。
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<引用・参考文献>
*1 『洋泉社MOOK・山口組・東京戦争』(有限会社創雄社編、2005年、洋泉社), p35,139
*2 『洋泉社MOOK・山口組・50の謎を追う』(有限会社創雄社『実話時代』田中博昭編、2004年、洋泉社), p189
*3 『山口組 分裂抗争の全内幕』「第1章 神戸山口組最高幹部が明かした「我々が割って出た本当の理由」」(西岡研介、2016年、宝島SUGOI文庫), p30
*4 『山口組 分裂抗争の全内幕』「第3章 二つの山口組-暗闘の全舞台裏 前編」(鈴木智彦、2016年、宝島SUGOI文庫), p113
*5 『山口組 分裂抗争の全内幕』「第7章 弘道会10年支配の黒歴史」(伊藤博敏、2016年、宝島SUGOI文庫), p239
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