日置連合会

　「日置連合会」はテキヤ組織「極東会」の2次団体でした(*1)。日置連合会は埼玉県蕨市に拠点を置いていました(*1)。日置裕之は、関口愛治の子分でした(*2)。太平洋戦争終了（1945年）後、関口一門（関口愛治系統のテキヤ組織群、その系統の一人親方群）の日置裕之は地方の祭りや縁日を回り、関口一門の営業エリアを拡大させました(*2)。

　後に日置裕之は「日置組」を立ち上げました(*1)。テキヤ業界では所属組織から独立する際、「一家名乗り」「分家名乗り」という2つの方法がありました。「一家名乗り」は実績のある子分に許されました(*3)。また「分家名乗り」は、実績のある舎弟（トップの弟分）に許されました(*3)。一家名乗りした者及び分家名乗りした者は、所属組織から独立を果しました(*4)。

　ただし一家名乗りに関しては、名目上するものの、独立をしない場合が多かったです(*5)。その場合、一家名乗りした本人だけで露店商売をしていきました(*3)。いわゆる「一人親方」として活動していったのです。

　関口愛治から分家名乗りを許されたのは、仲秀五郎と中村秀三郎の2人だけだったといわれています(*6) (*7)。

　日置裕之は、先述したように関口愛治の子分であり、関口愛治の率いる組織（「関口一家」もしくは「関口組」）から「一家名乗り」する形で日置組を立ち上げたのでした(*7)。

　ちなみに関口愛治はテキヤ組織「桜井一家」（初代・桜井庄之助）から一家名乗りして、関口一家を興しました(*7)。関口愛治は桜井庄之助の子分でした(*8)。1914年（大正三年）～1915年（大正四年）頃、関口愛治は桜井庄之助の子分になりました(*8)。当時、桜井庄之助はテキヤ組織「飴徳一家」に所属していました(*8)。

　1921年（大正十年）桜井庄之助は、竹内徳次郎（飴徳一家初代）の引退に伴って飴徳一家から「一家名乗り」をし、沼津で「桜井一家」を興しました(*8)。

　桜井庄之助の桜井一家からは、関口愛治の他に、古市正夫、渡辺慶太郎、名取幸治、遠藤繁造が一家名乗りをしました(*7)。

　日置組の話に戻ります。その後、日置裕之の率いる組織（日置組）からも、独立する者達が現れていき、「日置一門」（日置裕之系統のテキヤ組織群、その系統の一人親方群）が形成されていきました(*1)。栃木県宇都宮市では「日置分家」の組織（木村徳美を初代とする組織）が活動していました(*9)。

　日置一門の宗家（本家）初代は、当然、日置裕之になりました。有泉貢成が日置一門の宗家二代目、上原孝助が日置一門の宗家三代目を継承しました(*7)。

　テキヤ業界では分家名乗りして独立した者には、出身母体から庭場（縄張り）の一部が譲渡されました(*10)。一方、一家名乗りして独立した者に対しては、出身母体の組織は、庭場を割譲しませんでした(*10)。

　日置連合会は、日置一門の統括団体として、結成されました(*1)。

　上部団体の極東会は1994年テキヤ業界で初の「直参制度」を取り入れました(*11)。直参とは「親分（トップ）から直接盃を受けた子分及び舎弟」のことでした(*12)。直参制度ではまず「1次団体トップ」と「2次団体トップら」の間で、親子盃及び兄舎弟盃が交わされ、擬制的親族関係（親分-子分及び兄-舎弟の関係）が形成されました(*12)。結果、両者の関係は垂直的（支配-被支配的）になりました（1次団体トップが支配者で、2次団体トップらは被支配者）。その人間関係が、両者の率いる組織にも反映されたのが直参制度の特徴でした(*12)。直参制度では、1次団体が支配者、2次団体が被支配者の関係が形成されたのでした。

　直参制度により同年（1994年）12月9日、極東会会長（1次団体トップ）と2次団体トップなどの間で「親子盃」及び「兄舎弟盃」が交わされ、「親分-子分」及び「兄-舎弟」の関係が形成されました(*13)。

　直参制度の取り入れにより、1次団体・極東会は2次団体を支配することになったのです。極東会は1994年以降、統括団体としての性格を薄めていったともいえます。

　ヤクザ業界において江戸時代から見られる組織名称として「一家」がありました(*14)。ヤクザ組織（博徒組織及びテキヤ組織）は元々「擬制的親族関係」（「親分-子分関係」及び「兄-舎弟関係」）に基づいて構成されており、「一家」という名称は「擬制的親族集団」を指す言葉としては適切でした(*14)。一方、「会」という組織名称は「擬制的親族集団」を指す言葉としては不適切な印象を受けます。

　直参制度とは、1次団体（厳密にいえば「1次団体トップと2次団体トップら」）を「一家」（擬制的親族集団）化する仕組みだったともいえました。これに基づけば1994年以降、極東会は「一家」化していったことになります。

＜引用・参考文献＞

*1 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』（実話時代編集部編、2003年、三和出版）, p166

*2 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』, p10

*3 『テキヤと社会主義　1920年代の寅さんたち』（猪野健治、2015年、筑摩書房）, p99-100

*4 『テキヤと社会主義　1920年代の寅さんたち』, p179

*5 『テキヤと社会主義　1920年代の寅さんたち』, p28

*6 『ヤクザ伝　裏社会の男たち』（山平重樹、2000年、幻冬舎アウトロー文庫）, p170-171

*7 『公安大要覧』（藤田五郎、1983年、笠倉出版社）,p330

*8 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』, p31-36,39

*9 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』,p168

*10 『テキヤと社会主義　1920年代の寅さんたち』, p72-73

*11 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』,p19

*12 『ヤクザに学ぶ　伸びる男　ダメなヤツ』（山平重樹、2008年、徳間文庫）,p329-330

*13 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』,p21

*14 『現代ヤクザ大事典』（実話時代編集部編、2007年、洋泉社）,p12