ヤクザ組織による債権回収代行

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 民間企業は債権回収の場面によっては、ヤクザ組織を利用しました。金を貸したにも関わらず、借りた相手が返そうとしない場面です(*1)。合法的手続きによれば、司法で決着をつけます(*1)。裁判開始まで早くて1年はかかりました(*1)。決着がつくまでは、早くて3年遅くて10年はかかりました(*1)。また裁判前後の交渉や手続きは弁護士に依頼することになり、費用もかかりました(*1)。

 司法より「早く」債権回収を代わりにしたのがヤクザ組織でした。九州の村上一家四代目総長だった浪川政浩は自身の著作で、ヤクザ組織と表世界の経済交流について「何よりの利点は、表世界同士のビジネスより我々との仕事の方が速いからです。地上げや店子の追い出し、或いは会社の買収にしても、ヤクザが介入すれば何事もリーズナブルにスピーディーに解決しますし(後略)」と述べていました(*2)。

 当事者の発言なので、割り引いて受け取る必要はありますが、「仕事の早さ」をヤクザ組織が長所にしていることが伝わってきます。ヤクザ組織は暴力装置(暴力行使をいとわない構成員ら)を持つ為、場面によっては、利害関係者をまとめきる力(調整力)に長けていました。調整力が高ければ、事は短時間に解決されます。債権回収場面でも、ヤクザ組織の調整力は効力を発揮できたと考えられます。

 債権回収代行においてヤクザ組織の取り分は「債権額の半分」でした (*1)。債権額1億円の場合、5千万円がヤクザ組織の取り分(収益)になりました。一方「債権額の半分」ではなく、「回収額の半分」がヤクザ組織の取り分になる場合もありました(*3)。債権額1億円で回収額が5千万円の場合、2千500万円がヤクザ組織の取り分になりました。

 ヤクザ社会では債権回収の代行業務は「切り取り」と呼ばれました(*4)。身近な例では、飲み屋のツケの回収代行がありました(*4)。店側のツケの権利は1年間とされ、1年間店は客に請求し続けました(*1)。1年過ぎても払わない客のツケの回収が、ヤクザ組織の仕事となりました(*1)。「100万円前後の債権回収」は若手組員の仕事でした(*1)。債権額1億円クラスの場合、ヤクザ組織の大物が事に当たりました(*1)。多額の債権の場合、回収代行業務は「追い込み」と呼ばれました(*4)。

<引用・参考文献>

*1 『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版), p130-133

*2 『男達 現代が失ったオトコの神髄』(浪川政浩・明石散人、2007年、WAVE出版), p38-39

*3 『DATAHOUSE BOOK 011 シノギの手口』(夏原武、2003年、データハウス), p57

*4 『DATAHOUSE BOOK 011 シノギの手口』(夏原武、2003年、データハウス), p56

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