2017年ある会社経営者が四国の第二地銀(A銀行)の支店を訪れ、1千万円の海外送金を依頼しました(*1)。送金先は、B会社が持つ香港の銀行口座でした(*1)。名目上の送金目的は、会社経営者によるB会社への貸付でした(*1)。
会社経営者は送金依頼前から、A銀行の大阪支店に口座を持ち、取引実績も持っていました(*1)。会社経営者による同一内容の送金依頼は続きました(*1)。結果、会社経営者のB会社に対する海外送金は、計5回総額5億5千万円の規模になりました(*1)。依頼人がすでに口座や取引実績を持っていた場合、銀行の審査のハードルは低くなるようです(*1)。
A銀行は該当の香港の銀行と取引がなかった為、コルレス契約を結ぶ「みずほ銀行」に送金委託をしました(*1)。
2018年、財務省四国財務局に情報提供があり、A銀行の海外送金は「不正送金」であったことが発覚しました(*1)。B社は貿易会社であり、中国の黒竜江省のある商社と取引関係にあることが分かりました(*1)。該当の商社が北朝鮮と密貿易をしていることは広く知られていました(*1)。
総額5億5千万円の金は「会社経営者→A銀行→みずほ銀行→B社(香港の銀行口座)→黒竜江省の商社→北朝鮮」という経路を辿った疑いが浮上しました。最終送金先が実際北朝鮮であれば、今回の送金は「不正送金」に該当します。
A銀行が送金を疑わなかった要因として、既存の口座や取引実績により依頼者の信用が高かったこと、B社の存在により「最終送金先」が隠れてしまったことが考えられます。
<引用・参考文献>
*1 『選択』2018年3月号「みずほが関与「北朝鮮不正送金」疑惑」, p72-73
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