日本の覚醒剤市場はヤクザ組織の「支配下」にあります(*1)。背景には、裏社会においてヤクザ組織が他に比べ、組織力及び資金獲得力において優位であったことがあると考えられます。また地域の偏在なく、日本中にヤクザ組織が散在していたことも、ヤクザ組織が覚醒剤市場を牛耳れた要因の1つです(*1)。ヤクザ組織の散在により、ヤクザ組織間のネットワークは日本中を覆うことができました。ヤクザ組織は組織間のネットワークを「覚醒剤の流通網」に転用し、日本中で覚醒剤を販売しました。「ヤクザ組織間ネットワーク」は、ヤクザ組織の覚醒剤ビジネスにおいて、有利に働いたと考えられます。
1987~1990年の摘発例から、道仁会(福岡県)下部団体が「元売り」として活動し、北海道で活動する道仁会下部団体に卸す一方、他団体である共政会(広島県)下部団体にも卸していました(*1)。ヤクザ組織の覚醒剤取引において、他団体と取引することはよくありました(*1)。
工藤會(福岡県)は覚醒剤ビジネスにおいて、主に関東のヤクザ組織から覚醒剤を仕入れていました(*2)。また工藤會が「元売り」として、密輸を担うこともありました(*2)。工藤會が覚醒剤ビジネスにおいて「卸」や「元売り」をしていたことが分かります。
<引用・参考文献>
*1 『薬物とセックス』(溝口敦、2016年、新潮新書), p130-133
*2 『県警VS暴力団 刑事が見たヤクザの真実』(藪正孝、2020年、文春新書), p199
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