ツマミチョーフ

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 テキヤ(露店商)業界では「チョーフ」(チョウフ)という言葉がありました。チョーフとは「分け前」を意味しました(*1)。

 露店商が働く際、3つの利益分配方法がありました。それは「一(漢数字の「1」)チョーフ」「半チョーフ」「ツマミチョーフ」の3つでした。

 「一チョーフ」は、露店商が露店商売における「利益全てを自分のものにできること」を意味しました(*2)。一チョーフは「親分0%、露店商100%」という利益分配割合でした。

 「半チョーフ」は、露店商とその親分による「利益折半」を意味しました(*2)。半チョーフは「親分50%、露店商50%」という利益分配割合でした。

 「ツマミチョーフ」は、親分が裁量で小遣いを露店商に渡すことを意味しました(*2)。ツマミチョーフは名目上「親分100%、露店商0%」という利益分配割合でした。

 「稼ぎ込み」がツマミチョーフの下で働きました(*2)。「稼ぎ込み」はテキヤ組織の新人や若手を指しました(*3)。テキヤ組織において新人や若手は露店商売の利益を全て親分に渡すことになっていました。稼ぎ込みは、親分から商品を借りて販売していました(*4)。

 稼ぎ込みの上の段階が「一本(いっぽん)」でした(*3)。一本には2種類ありました。1つが、親分から商品と資本を借りて営業し、その利益の半分を親分に渡すというものでした(*4)。もう1つの一本が、自分の資本で親分から商品を「1割高」の価格で仕入れて営業するものの、利益全額を自分のものにすることができました(*4)。前者の一本が半チョーフの下で働き、後者の一本は一チョーフの下で働いていたのです。

 ちなみに経費額が売上額を上回ったら、損失(赤字)となります。赤字の分け前は「ガミチョーフ」と呼ばれました。

<引用・参考文献>

*1 『香具師はつらいよ』(北園忠治、1990年、葦書房),p160

*2 『新・ヤクザという生き方』「全丁字家誠心会芝山一家物語」(朝倉喬司、1998年、宝島社文庫), p197-198

*3 『テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る』(厚香苗、2014年、光文社新書), p141

*4 『テキヤのマネー学』(監修:仲村雅彦、取材・構成:高橋豊、1986年、東京三世社),p77

*5 『香具師はつらいよ』,p88

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