違法薬物の売人に「偽装」し、儲ける裏ビジネスがかつてありました。偽装側はクラブ(ダンスできる場所を客に提供する施設)等で違法薬物を購入しそうな者に声を掛け、合法的な薬局で購入した薬を「違法薬物」と思わせた上で、販売しました(*1)。「違法薬物」と思わせる薬として用いられたのは錠剤で、消化剤と整腸剤でした(*1)。
錠剤型の違法薬物として知られるのがMDMAでした(*2)。通常売人は100錠単位のMDMAを1錠1,700~2,000円の価格で卸から購入しました(*2)。一方消化剤と整腸剤は、現在薬局等において1,000円前後(数十錠~数百錠)で販売されています。MDMAに比し、消化剤と整腸剤は安く仕入れられました。消化剤や整腸剤を「違法薬物」として販売したことで、偽装側の利幅は大きくなりました。
当然「違法薬物としての薬効」がないため、購入者からのクレームに対応する必要がありました(*1)。違法薬物の売人に偽装するビジネスのライバルは、「本物の違法薬物の売人」(後ろにはヤクザ組織が控えていました)でした。本物の違法薬物の売人にとって、偽装側は厄介者であり、制裁対象でした。
<引用・参考文献>
*1 『DATAHOUSE BOOK 031 悪い金儲け』(高原明光、2005年、データハウス), p64-65
*2 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p208-210
コメント