テキヤ業界において、口上なしの露店は「小見世」(コミセ)と呼ばれました (*1) 。小見世の露店商は、預かり者や素人に近い者が多かったです(*1)。
小見世では主に風船、飴、菓子、ほうずき等が販売されていました(*2)。また小見世は「古見世」とも記されました(*2)。
一方、口上ありの露店は「コロビ」と呼ばれました (*2) 。厳密にいえばコロビとは、地面に茣蓙(ゴザ)を敷いて、その茣蓙の上に商品を並べて販売する形態を指しました(*2)。ゆえに商品によっては口上なしのコロビもありました(*2)。「極東」「飯島」「寄居」「桝屋」「丁字家」一門の源流は、コロビ系のテキヤ勢力でした(*3)。
ちなみに高市(たかまち)において出店露店商は、庭主(にわぬし)及び所属先組織の親分、加えてその兄貴分と「同じ商品」を出してはいけないという「暗黙の了解」がありました(*4)。
高市とは、社寺の祭礼や縁日において仮設された露店市のことでした(*5)。庭主とは、その高市を仕切る地元テキヤ組織の親分のことでした(*6)。庭主は露店配置決めの権限を持っていました(*6)。
<引用・参考文献>
*1 『親分 実録日本俠客伝①』(猪野健治、2000年、双葉文庫), p222
*2 『生活史叢書3 てきや(香具師)の生活』(添田知道、1973年、雄山閣),p144-145
*3 『新・ヤクザという生き方』「全丁字家誠心会芝山一家物語」(朝倉喬司、1998年、宝島社文庫), p224
*4 『テキヤのマネー学』(監修:仲村雅彦、取材・構成:高橋豊、1986年、東京三世社),p84
*5 『盛り場の民俗史』(神崎宣武、1993年、岩波新書),p44
*6『ヤクザに学ぶ 伸びる男 ダメなヤツ』(山平重樹、2008年、徳間文庫),p157
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