1980年代のマイアミとアトランタにおける「コカインの販売価格」

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 1980年代フロリダ州マイアミではコカインは、1オンス(28.3495g)あたり約500ドルで密売されていました(*1)。一方、ジョージア州アトランタでは、コカインは1オンス(28.3495g)あたり約1,800ドルで密売されていました(*1)。

 一般的に末端市場(小売市場)ではコカインは1gで密売されてきました(*2)。使用者は1gのコカインを2~3cmの長さにして、それを吸引します(*3)。コカインの場合、0.1gの吸引で薬効が出てきます(*3)。

 1970年代~21世紀のアメリカ合衆国におけるコカイン小売価格は、1gあたり50~150ドル強の間で推移してきました(*4)。

 ゆえに「マイアミにおけるコカイン1オンスあたり約500ドル」と「アトランタにおけるコカイン1オンスあたり約1,800ドル」という販売価格は、末端市場ではなく、その上の市場(業者間の取引市場)の価格帯であったことが考えられます。しかし1オンス(28.3495g)という単位から、卸売価格でもなかったと考えられます。

 おそらく卸売市場と末端市場の間に位置する市場の価格帯であったと考えられます。例えば「小売組織」が「末端売人」に卸す時の販売価格だったのではないとかと思われます。

 アトランタの価格はマイアミの3倍を超えていたことが分かります。ちなみに1gに直すとマイアミは約17.6ドル、アトランタは約63.4ドルとなります。

 当時マイアミの麻薬密輸組織の中には、コカイン供給国・コロンビアの麻薬密輸組織と直接取引をしていた組織がありました(*1)。地理的にもマイアミはコロンビアに近く、港町です。一方、アトランタは内陸都市です。コカインの流通量において、マイアミの方がアトランタより多かったと推測されます。コカイン流通量の差が、両都市のコカイン価格に影響を及ぼしていた要因の1つと考えられます。

 年代と地域は異なりますが、1990年代のロシアにおいてコカイン小売価格は1キロあたり約6万ドルでした(*5)。1gに直すと1990年代ロシアのコカイン小売価格は約60ドルになります。1990年代のマイアミではロシア系アウトロー組織も活動しており、コロンビア麻薬カルテルからコカインを仕入れ、ロシアのサンクトペテルブルクに密輸していました(*5)。

<引用・参考文献>

*1 『TRAP  HISTORY:ATLANTA  CULTURE  AND THE GLOBAL IMPACT OF TRAP MUSIC』(A.R.SHAW,2020,Bluefield Media, LLC), p26

*2 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』(ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子/中島知子訳、2015年、河出書房新社),p106-107

*3 『コロンビア内戦 ― ゲリラと麻薬と殺戮と』(伊高浩昭、2003年、論創社),p113

*4 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』(ヨアン・グリロ著、山本昭代訳、2014年、現代企画室), p90

*5 『レッド・マフィア』(ロバート・I・フリードマン著、中島由華訳、2001年、毎日新聞社),p186-190

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