1955~1964年、全国で芸能会社及び興行会社は約2,000社あり、約70%(1,400社)がヤクザ組織の関与する会社でした(*1)。ヤクザ組織の関与する興行関係会社の中でも、約300社が実質的な活動をしていたといわれています(*1)。ヤクザ組織が興行界に大きな影響を及ぼしていたことが分かります。
ヤクザ組織は映画撮影でも関与していました(*2)。映画撮影に集まる「見物人」の整理役をヤクザ組織が担っていました(*2)。映画会社は撮影前に、撮影現場の地域を活動拠点とするヤクザ組織に、整理役を依頼しました(*2)。
映画会社は整理役の依頼にあたって、一定の金額をヤクザ組織に払っていたと考えられます。もし映画会社がヤクザ組織に整理役を依頼しなかった場合、ヤクザ組織の構成員が見物人を装い映画撮影を邪魔していたと考えられます。映画会社はヤクザ組織に対し、「整理役」の対価ではなく、「映画撮影を安全に行える」対価として金を払っていたのが実態だったと考えられます。
<引用・参考文献>
*1 『興行界の顔役』(猪野健治、2004年、ちくま文庫), p86
*2 『実話時代』2019年9月号, p83
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