違法薬物のコカインは「コカノキ」「ナガバコカノキ」という2種の植物を原料とします(*1)。上記2種のコカの葉には「アルカロイド」という成分が0.3~1.4%程度含有されています(*1)。コカインの薬理作用としては興奮性があり (*2)、その興奮性の主成分がアルカロイドです(*1)。
コカノキはペルー東部の熱帯地域、エクアドル、ボリビアなどで栽培されてきました(*1)「ワヌコ」と呼ばれたボリビア産のコカノキは、高価で、また広く流通しました(*1)。
一方、ナガバコカノキはコロンビア、カリブ海諸国、ペルー北部の山岳地帯などで栽培されていました(*1)。ナガバコカノキの中では特に「ペルーコカの亜種」が有名で、別名「トルヒージョ」と呼ばれました(*1)。
コカインの原料としてはワヌコとトルヒージョの需要が高かったです(*1)。
コロンビアの麻薬組織は世界のコカイン市場における「主要供給元」でし。2010年代「世界におけるコカイン消費量の約60%」がコロンビア産であると推測されていました(*3)。コロンビアが長年コカインの密輸大国であり、また密造大国でもあったことが分かります。
コロンビアの麻薬組織としては「メデジン・カルテル」(Medellín Cartel)が有名でした(*3)。メデジンはコロンビアのアンティオキア県の県都でした。メデジン・カルテルの首領はパブロ・エスコバル(Pablo Escobar)でした(*3)。パブロ・エスコバルは1950年、メデジンの郊外で生まれました(*4)。
メデジン・カルテルには「オチョア一家」(Ochoa family)、ホセ・アントニオ・オカンポ(Jose Antonio Ocampo)、ホセ・ゴンサロ・ロドリゲス・ガチャ(Jose Gonzalo Rodriguez Gacha)、カルロス・レデル(Carlos Lehder)らも加わっていました(*4)。オチョア一家にはフアン・ダビド・オチョア(Juan David Ochoa)、ファビオ・オチョア(Fabio Ochoa)、ホルヘ・オチョア(Jorge Ochoa)の3兄弟がいました(*4)。オチョア一家は馬の繁殖事業を営んでいました(*4)。ホセ・アントニオ・オカンポの前職はタクシー運転手でした(*4)。
メデジン・カルテルは1980年代初め、飛行機でコロンビア北岸からフロリダ沿岸まで直接コカインを輸送していまし(*5)。飛行機はフロリダ沿岸で海に向かって荷(コカイン)を落とし、待機していた関係者がスピードボードで荷を回収しました(*5)。アンティオキア県はコロンビア北岸に位置しています。メデジンは地理的にフロリダに空輸しやすいエリアだったのです。
メデジン・カルテルと拮抗していたのが「カリ・カルテル」(Cali Cartel)でした(*6)。また1997年結成の民兵組織「コロンビア自警団連合」(*7)、1958年結成の左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」(*8)もコカインビジネスで収益を得ていました。
しかし2010年代にはメキシコ麻薬組織(シナロア・カルテル)がコロンビア国内のコカイン製造にまで関与するようになりました(*3)。昔に比し2010年代にはコロンビアの麻薬組織などの勢いが弱くなったことが背景にあります(*3)。
<引用・参考文献>
*1 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』(ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子/中島知子訳、2015年、河出書房新社), p156
*2 『薬物とセックス』(溝口敦、2016年、新潮新書), p78-79
*3 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』, p173-174
*4 『Cocaine: An Unauthorized Biography』(Dominic Streatfeild,2003,Picador), p230
*5 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』(ヨアン・グリロ著、山本昭代訳、2014年、現代企画室), p94
*6 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』, p32
*7 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』, p208-209
*8 『エリア・スタディーズ52 アメリカのヒスパニック=ラティーノ社会を知るための55章』「麻薬テロリズム-左翼テロ組織「FARC」の実態」(大泉光一、2005年、明石書店),p173-179
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