バイカーギャングとマフィア

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 中部大西洋及び五大湖地域における組織犯罪取締ネットワーク(Middle Atlantic Great Lakes Organized Crime Law Enforcement Network)は、1,061人の取締機関捜査官からの情報を基に、「該当地域におけるバイカーギャングの犯罪活動」(2000~2003年)の状況を報告しました(*1)。

 資金獲得源面では、バイカーギャングは主に違法薬物の流通、製造で資金を獲得していました(*1)。違法薬物の流通及び製造に比し、資金洗浄、盗品売買、火器の違法取引、自動車窃盗を手掛けるバイカーギャング構成員は少数でした(*1)。

 他組織との連携面では、バイカーギャングはマフィア(シチリア系アウトロー組織)のような古いアウトロー組織と組むことが最も多かったです(*1)。活動拠点内においては、バイカーギャングは白人至上主義グループやストリート・ギャングと手を組んでいました(*1)。違法薬物の流通面ではバイカーギャングはストリート・ギャングに業務を委託していました(*1)。

 バイカーギャングが外部委託した狙いとしては、違法薬物捜査の矛先を分散させることがありました(*1)。日本の覚醒剤ビジネスにおいては、同一のヤクザ組織が全流通経路を担うことはなく、複数の組織が流通経路に介在します(*2)。ヤクザ組織も覚醒剤ビジネスにおいてはリスク分散の為に、他組織と組んでいる面があると考えられます。

 第2次世界大戦後のアメリカ合衆国においてマフィアは「ヘロインの元売り組織」として活動してきました(*3)。バイカーギャング業界では昔から多くの組織が構成員に対し「摂取時に注射器を用いる違法薬物の使用」を禁じしていました(*4)。「注射器を用いる違法薬物」とは具体的には覚醒剤とヘロインを指しました(*4)。ヘロインはバイカーギャング業界の中では「禁止薬物」だったのです。背景にはヘロインの強い依存症が構成員を害するという懸念がありました(*4)。

<引用・参考文献>

*1 『Biker Gangs and Transnational Organized Crime Second Edition』(Thomas Barker,2014,Routledge), p94-95

*2 『薬物とセックス』(溝口敦、2016年、新潮新書), p130-136

*3 『シチリア・マフィアの世界』(藤澤房俊、2020年、講談社学術文庫), p223-224

*4 『OUTLAWS  THE TRUTH ABOUT AUSTRALIAN BIKERS』(Adam Shand,2013,Allen & Unwin), p123

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