「結晶性メタンフェタミン」と「オーストラリアのバイカーギャング」

  • URLをコピーしました!

 アメリカ合衆国のバイカーギャング「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s  Angels)は1960年代後半以降、メタンフェタミン(覚醒剤の一種)の製造及び販売ビジネスを手掛けていきました(*1)。

  一方で多くのバイカーギャングは構成員に対し、違法薬物使用に関するルールを課していました(*2)。多くのバイカーギャングは構成員に対し「摂取時に注射器を用いる違法薬物の使用」を禁じていました(*2)。「注射器を用いる違法薬物」とは主に、ヘロインと覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)を指しました(*2)。バイカーギャングは注射摂取をした構成員を見つけたら、該当者には「短期間の追放」「バイクの没収」「鞭打ち」の処分を下しました(*2)。

 1990年代のオーストラリアでは結晶性メタンフェタミン(crystalline-methamphetamine)が流行しました(*2)。結晶性メタンフェタミンは別名「アイス」(ice)と呼ばれました(*2)。

 オーストラリアの「国立依存症教育・訓練センター」(National Centre for Education and Training on Addiction: NCETA)サイト内の「アルコールと薬物に関する全国的な知識データベース」によれば、結晶性メタンフェタミンはメタンフェタミンの一種で、高い純度、強い薬効を特徴としています(*3)。また薬効においてメタンフェタミンはアンフェタミンより強力です(*4)。つまり結晶性メタンフェタミンは覚醒剤の中でも極めて強い効能を有しているのです。結晶性メタンフェタミンの主な摂取方法は、吸煙または注射です(*3)。

 1990年代ヘルズ・エンジェルスのアメリカ合衆国内の支部は、構成員に対し結晶性メタンフェタミンの使用(摂取)を禁止しました(*2)。他方オーストラリアのヘルズ・エンジェルスでは、結晶性メタンフェタミン使用に関する件は、各支部の判断に委ねられていました(*2)。後にアメリカ合衆国外の支部も概ね、アメリカ合衆国のヘルズ・エンジェルスに追従し、結晶性メタンフェタミンの使用を禁止しました(*2)。  オーストラリアではヘルズ・エンジェルス以外の主要バイカーギャングも結晶性メタンフェタミン摂取の怖さを認識しており、吸煙による結晶性メタンフェタミン摂取を禁止しました(*2)。しかし主要バイカーギャングは、経鼻吸引による結晶性メタンフェタミン摂取だけを例外的に認め、完全禁止には至れませんでした(*2)。

<引用・参考文献>

*1『Angels of Death: Inside the Bikers’ Global Crime Empire』(William Marsden&Julian Sher,2007,Hodder & Stoughton), p40-42

*2 『OUTLAWS  THE TRUTH ABOUT AUSTRALIAN BIKERS』(Adam Shand,2013,Allen & Unwin), p123-124

*3 オーストラリアの「国立依存症教育・訓練センター」

(National Centre for Education and Training on Addiction: NCETA)サイト内の

「結晶性メタンフェタミン」

https://nadk.flinders.edu.au/kb/methamphetamines/crystal-methamphetamine-ice

*4 オーストラリア犯罪情報委員会サイト内「違法薬物データレポート(Illicit Drug Data Report)2019–20」(2021), p34

https://www.acic.gov.au/sites/default/files/2021-10/IDDR%202019-20_271021_Full_0.pdf

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次