バイカーギャングの組織名には一般的に「MC」が付きます。例えば「Hell’s Angels MC」(ヘルズ・エンジェルス)、「Pagans MC」(ペイガンズ)などがあります(*1)。MCとは「motorcycle club」の略です(*2)。日本語に直すと「バイク(オートバイ)クラブ」となります。日本語での言いやすさを重視し、motorcycle clubをここでは「バイカークラブ」と訳します。つまりバイカーギャングは自身の組織を「クラブ」と捉えているのです。
バイカーギャングの別名としては「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」(outlaw motorcycle clubs)、「アウトロー・モーターサイクル・ギャング」(outlaw motorcycle gangs)があります(*2)。英語の略として前者は「OMCs」、後者は「OMGs」と表記されます(*2)。「バイカーギャング」(biker gangs…正しく読めば「バイカーギャングズ」になります)という言葉は、おそらく「アウトロー・モーターサイクル・ギャング」(OMGs)の略称のような形で生まれたと考えられます。
「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」という名称を用いる者は、該当組織はあくまでもバイカークラブつまりバイク好きの同好会であり、クラブメンバーの中にたまたま犯罪活動をしている者がいるという説明をします(*2)。一方、「アウトロー・モーターサイクル・ギャング」という名称を用いる者は、該当組織は犯罪活動集団であり、構成員の中にバイク好きがいるという説明をします(*2)。日本のヤクザ組織においても、ヤクザ組織は自身を「テキヤ組織」(極東会)、「政治結社」(共政会)等と位置づけ、構成員の中に犯罪活動をしている者がいるという説明をしています。
元々アメリカ合衆国のバイカー業界では「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」という言葉しかありませんでした。1908年「アメリカンモーターサイクリスト協会」(American Motorcyclists’ Association)に非加盟の1バイカークラブが「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」(outlaw motorcycle club)と呼ばれたことから、「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」という言葉が広まりました(*3)。
アメリカンモーターサイクリスト協会は後の1924年、「アメリカンモーターサイクル協会」(American Motorcycle Association)に改称しました(*3)。当時「アウトローズ」(Outlaws)や「ブーズファイターズ」(Boozefighters)がアメリカンモーターサイクル協会に「非加盟のバイカークラブ」で、「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」と呼ばれていました(*3)。
しかし「アメリカンモーターサイクル協会に非加盟のバイカークラブ全て」が「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」に該当したのは分かりません。例えば「法律遵守で穏健なバイカークラブ」の場合、アメリカンモーターサイクル協会に非加盟だったとしても、「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」とは呼ばれなかった可能性があります。
後に、アメリカ合衆国の警察組織は「アウトロー・モーターサイクル・クラブ」と呼ばれるバイカークラブを、「犯罪組織」つまり「アウトロー・モーターサイクル・ギャング」として捉えていきました(*4)。 以上からバイカーギャングは自身の組織を「クラブ」と呼び、一方警察組織は彼らを「ギャング」と呼んでいることが分かります。日本のヤクザ組織が自身を「ヤクザ」と呼び、一方、警察組織がヤクザ組織を「暴力団」と呼んでいることと似ています。またバイカーギャングは「ワンパーセンターズ」(the 1%ers)とも呼ばれます(*3)。
<引用・参考文献>
*1 『Biker Gangs and Transnational Organized Crime Second Edition』(Thomas Barker,2014,Routledge), p104,111
*2 『Biker Gangs and Transnational Organized Crime Second Edition』, p9-10
*3 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin),p23-24
*4 『Biker Gangs and Transnational Organized Crime Second Edition』, p35-36
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