オーストラリアにはかつて「ノマッズ」(Nomads)という組織名の地元バイカーギャングが活動しています(*1)。ノマッズは同じ地元バイカーギャング「コマンチェロズ」(Comancheros)と友好関係を築いていました(*1)。
ノマッズは中東やポリネシア系の者を構成員にすべく、熱心に勧誘していました(*2)。友好関係のコマンチェロズも同様に地中海沿岸や中東、セルビア、太平洋諸島系の者を勧誘していました(*3)。また「フィンクス」(Finks)もアボリジニ、イスラム教徒(ムスリム)等の構成員を擁していました(*4)。
1990年代後半、中東系のサム・イブラヒム(Sam Ibrahim)がノマッズ「パラマタ支部」の支部長に就任しました(*2)。サム・イブラヒムの支部長就任は、オーストラリアのバイカーギャング業界において、中東系の者が初めてリーダーに就いた事例となりました(*2)。パラマタという都市はシドニー西部郊外に位置しています。2017年時点ではサム・イブラヒムの親戚であるスレイマン・タジユール(Sleiman Tajjour)がノマッズのトップ職(national president)に就いていました(*2)。
しかし2007年ノマッズ2支部の構成員60人以上が、アメリカ合衆国系バイカーギャング「バンディドス」(Bandidos)に移籍しました(*1)。2007年ノマッズ移籍組は「パラマタ支部構成員60人以上」だったという話(つまり移籍したのは1支部だけ)もあります(*5)。
2007年ノマッズ移籍組の騒動をきっかけに、バンディドスはコマンチェロズと抗争に至りました(*5)。またバンディドスに移籍しなかった旧ノマッズ勢力は、新団体「ノウトリアス」(Notorious)を立ち上げました(*5)。
<引用・参考文献>
*1 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』(Alex Caine,2010,Vintage Canada), p28
*2 『Gangland: New Zealand’s Underworld of Organised Crime』(Jared Savage,2020, HarperCollinsPublishers), p200-201
*3 『Gangland: New Zealand’s Underworld of Organised Crime』, p194
*4 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin), p72
*5 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p155-156
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