アメリカ合衆国系バイカーギャングの「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s Angels)と「アウトローズ」(Outlaws)は過去、対立関係にありました(*1)。ヘルズ・エンジェルスは1948年カリフォルニア州サンバーナーディーノで結成(*2)、アウトローズは1935年イリノイ州シカゴの郊外で結成されました(*3)。
両団体が対立関係に陥った一因としては、両団体の拡張主義(覇権主義)がありました。両団体ともアメリカ合衆国内での勢力拡張を務めた為、進出地域でぶつかってしまうことがあったのです(*1)。「進出地域の支配権」を巡り両団体は角逐しました(*1)。
後にアメリカ合衆国系バイカーギャング「バンディドス」(Bandidos)が仲裁役として、両団体の間に入りました(*1)。バンディドスは1966年テキサス州の漁村サン・レオン(San Leon)で結成されました(*4)。
開催年は不明ですが(*1)、サウスダコタ州スタージス(Sturgis)で「大手バイカーギャング会談」が開かれました(*1)。スタージスでは毎年1回バイクのイベントがあり、そのイベントには北米中から多くのバイカーが集まりました(*1)。そのイベント中に、「大手バイカーギャング会談」が開かれたのです(*1)。ちなみにバンディドスは、ロニー・ホッジ(Ronnie Hodge)がトップ(national president)だった時代(1972年にトップ就任)(*5)、サウスダコタ州のラピッドシティ(Rapid City)に本部(national chapter)を約3年間置いていました(*6)。ラピッドシティはロニー・ホッジの地元でした(*6)。
図 サウスダコタ州スタージスの地図(出典:Googleマップ)
当時アメリカ合衆国内のビッグ4として知られたのが、先述の3団体と「ペイガンズ」(Pagans)でした(*1)。ペイガンズは1959年メリーランド州プリンスジョージズ郡(Prince George Country)にて結成されました(*7)。スタージスにおける「大手バイカーギャング会談」にはビッグ4のうちペイガンズを除いた3団体が参加しました(*1)。
会談ではアメリカ合衆国-カナダ間における違法薬物の「輸送エリア」が割り振られました(*1)。ヘルズ・エンジェルスには「西海岸(太平洋沿岸)」、バンディドスには「中央部」、アウトローズには「東部」の輸送エリアが割り振られました(*1)。例えばアメリカ合衆国西海岸⇔カナダ西海岸における違法薬物の輸送エリアでは、ヘルズ・エンジェルスが管轄することになりました。
しかしワシントン州(西海岸)にはバンディドスの支部もあった為、以降ヘルズ・エンジェルスとの協調のもとバンディドスのワシントン州勢は西海岸の一部を「実効支配」しました(*1)。 ペイガンズ会談不参加の一因としては、ペイガンズが拡張主義をとっていないことがありました(*1)。当時のペイガンズは活動範囲をアメリカ合衆国北東部のみに限定しており(*1)、カナダに対し関心を持っていなかったと考えられます。
<引用・参考文献>
*1 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』(Alex Caine,2010,Vintage Canada), p29-31
*2 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin) , p24
*3 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p185
*4 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p11
*5 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p15-16
*6 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p23
*7 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p190
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