イタリアのシチリア島におけるアウトロー組織としては「マフィア」(mafia)が有名でした(*1)。イタリアの歴史及びマフィア研究者であった藤澤房俊は1988年時、シチリア島を拠点に活動するマフィアを「シチリア・マフィア」、アメリカ合衆国を拠点に活動するマフィアを「アメリカ・マフィア」と名称を区分しました(*1)。
また藤澤房俊は「コーザ・ノストラ」(Cosa Nostra)という言葉を「アメリカ・マフィアの別名」として紹介しました(*1)。つまり1988年時の藤澤房俊によれば、「コーザ・ノストラ」は「シチリア・マフィア」を指す言葉ではなかったのです(「シチリア・マフィア」≠「コーザ・ノストラ」)。
しかし現在エセックス大学(イギリス)のアンナ・セルジ(Anna Sergi)は、イタリア系アウトロー組織全般を指す言葉として「マフィア」を用いています(*2)。つまりナポリのカモッラ(Camorra)、カラブリアのンドランゲタ(‘Ndrangheta)も「マフィア」というカテゴリーに収められています(*2)。
またアンナ・セルジはシチリア系アウトロー組織(藤澤房俊のシチリア・マフィア)を「コーザ・ノストラ」(Cosa Nostra)と呼んでいます(*2)。つまり現在のアンナ・セルジによれば、「コーザ・ノストラ」は「シチリア・マフィア」を指す言葉になっています(「シチリア・マフィア」=「コーザ・ノストラ」)。
現在のシチリア島には「スティッダ」(Stidda)と呼ばれるアウトロー組織が活動しています(*3)。シチリア州カルタニッセッタ県(シチリア島南部)のジェーラ(Gela)、カルタニッセッタ(Caltanissetta)の街でスティッダは活動しています(*3)。
図 シチリア州カルタニッセッタ県の地図(出典:Googleマップ)
スティッダは、アンナ・セルジの「コーザ・ノストラ」(藤澤房俊の「シチリア・マフィア」)とは別系統の組織です(*3)。アンナ・セルジの「コーザ・ノストラ」に比し、スティッダの組織形態は水平型といわれています(*3)。スティッダは連合型の組織形態であることが推測されます。
またスティッダは国内ではロンバルディア州(イタリア北西部)、国外ではドイツ、ベルギーに進出しています(*3)。
以上から現在のシチリア系アウトロー組織は2つ(アンナ・セルジの「コーザ・ノストラ」、スティッダ)あることが分かります。
<引用・参考文献>
*1 『シチリア・マフィアの世界』(藤澤房俊、2009年、講談社学術文庫), p25-27
*2 Anna Sergi・Alice Rizzuti.(2021). C.R.I.M.E. Countering Regional Italian Mafia Expansion.
*3 Anna Sergi・Alice Rizzuti.(2021). C.R.I.M.E. Countering Regional Italian Mafia Expansion, p40
コメント