2017年モントリオールにおける3系統のアウトロー組織

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 カナダ東部の大都市モントリオール(ケベック州)では2013年までリズート・ファミリーのヴィト・リズート(Vito Rizzuto)が「顔役」として裏社会をまとめていました(*1)。しかし2013年12月ヴィト・リズートは死去しました(*1)。

 2017年時点のモントリオールでは主に3系統のアウトロー組織が活動していました(*1)。1つがリズート・ファミリー等のイタリア系アウトロー組織でした(*1)。しかし警察組織が2006年以降取締りを強化したことにより、2017年時点のリズート・ファミリー等のイタリア系組織は弱体化していました(*1)。モントリオールの違法薬物ビジネスではイタリア系組織は元売り(密輸入)と卸売り(higher levels of distribution)、つまり川中の流通を担っていました(*1)。

 2つ目が「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s Angels)をはじめとするバイカーギャングでした(*1)。イタリア系組織が衰勢に向かっていたのに対し、ヘルズ・エンジェルスは2017年時モントリオールにおいて隆盛を極めていました(*1)。ヘルズ・エンジェルスはモントリオールにおいてコカインの「最大元売り組織」になっており、イタリア系組織はヘルズ・エンジェルス側からコカインを仕入れることもありました(*1)。加えてヘルズ・エンジェルスは違法薬物ビジネスでは卸売りも担っていました(*1)。

 昔のモントリオールではリズート・ファミリー等のイタリア系組織が「違法薬物の密輸入」を仕切っていました(*1)。つまり「元売り」の座にイタリア系組織がいました。1978年以降リズート・ファミリートップのニコロ・リズート(Nicolo Rizzuto)がコロンビア産コカインをベネズエラ経由でモントリオールに密輸する経路開拓に成功しました(*3)。ニコロ・リズートは、ヴィト・リズートの父になります(*4)。ヘルズ・エンジェルスは1977年にケベック州に初の支部を設立していたことから(*5)、モントリオールにおける違法薬物ビジネスにおいては「後発」の立場であったことが分かります。

 1990年代以降ヘルズ・エンジェルスの「ケベック・ノマド(Nomads)支部」はイタリア系組織と手を組み、コカインビジネスに取り組んでいきました(*2)。当時ケベック・ノマド支部は毎週250kgのコカインをモントリオール港に荷揚げしており(*2)、「元売り」の機能も果たしていたことが分かります。1990年代以降のモントリオールにおいて、ヘルズ・エンジェルスが「コカインの元売り」に参入していったことが考えられます。2023年時点でもヘルズ・エンジェルスはモントリオールに支部を置いています(*5)。

 3つ目が多民族系ストリートギャングでした(*1)。2017年時点のモントリオールでは4つもしくは5つの多民族系ストリートギャングが活動していました(*1)。モントリオールの違法薬物ビジネスでは多民族系ストリートギャングは川下の流通を担っていました(*1)。

<引用・参考文献>

*1 Anna Sergi.(2017). Tale of two cities: Serious & Organised Crime Criminal groups compete in eastern Canada. Jane’s Intelligence Review, July, p41-42

*2 『Angels of Death: Inside the Bikers’ Global Crime Empire』(William Marsden&Julian Sher,2007,Hodder & Stoughton),p312-314

*3 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』(GERG THOMPSON、2014、CreateSpace Independent Publishing Platform), p21-22

*4 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』, p19

*5 ヘルズ・エンジェルスのサイト「カナダのケベック州における支部」

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