2007年メルボルン（ビクトリア州）港の税関は1,500万錠のMDMAを押収しました(*1)。1,500万錠のMDMAは、3,000缶の「皮むきトマト缶」に隠されていました(*1) (*2)。この皮むきトマト缶はイタリアのナポリから輸入されていました(*1)。
1,500万錠のMDMAは重量に直すと4.4トン以上、末端価格に直すと約1億2,200万ドルになりました(*1)。MDMA1錠あたりの末端価格は約8.1ドルになります。ちなみに2023年4月現在の外国為替相場は、1豪ドル＝約88円です。現在の日本円に直すと、MDMA１錠あたりの末端価格は約713円になります。
ちなみに2012年出版の書籍（『裏社会 噂の真相』）によると、日本の末端市場（小売市場）ではMDMA1錠は5,000円程度で密売されていました(*3)。
1,500万錠MDMAの密輸はパスクワーレ・バルバロ（Pasquale Barbaro）により主導されていました(*2)。2012年パスクワーレ・バルバロは終身刑の判決を受けました(*2)。パスクワーレ・バルバロはニューサウスウェールズ州グリフィスの出身で、2012年時の年齢は50歳でした(*2)。パスクワーレ・バルバロの父は、イタリアのカラブリア州からの移民でした(*4)。
またニューサウスウェールズ州グリフィスは、イタリア人移民が多く住む街として知られていました(*5)。例えばオーストラリアのワインメーカー「デ・ボルトリ」の創業者ヴィットリオ・デ・ボルトリ（Vittorio De Bortoli）は、1924年イタリアのカステルクッコ（ウンブリア州）からグリフィスに移住しました(*6)。ウンブリア州はイタリアの中部に位置しています。
共犯者のサヴェリオ・ジリリ(Saverio Zirilli)に対しても18～26年の懲役の判決が下されました(*2)。またパスクワーレ・バルバロとサヴェリオ・ジリリは、約100kgのコカインを保有しようとした件でも有罪となりました(*2)。約100kgのコカインは、南米コロンビアのコーヒー豆袋に隠されていました(*2)。
カラブリア州のアウトロー組織（ンドランゲタ：‘Ndrangheta）は昔からオーストラリアに進出しており、オーストラリアの警察は1980年代からオーストラリア国内のンドランゲタを把握するようになっていきました(*4)。
1980年代前半のオーストラリア犯罪情報局（Australian Bureau of Criminal Intelligence）は、オーストラリアのンドランゲタは６つの地域に分かれて活動していたと見ていました(*4)。南オーストラリア州ではジュゼッペ・カルボン（Giuseppe Carbone）、ニューサウスウェールズ州ではドメニコ・アルバロ（Domenico Alvaro）、キャンベラではパスクワーレ・アルヴァーロ(Pasquale Alvaro)、グリフィスではピーター・カリパリ(Peter Callipari)、アデレードではジュゼッペ・アルヴァーロ（Giuseppe Alvaro）、メルボルンではパスクワーレ・バルバロ（Pasquale Barbaro）がそれぞれリーダーを務めていたようです(*4)。
＜引用・参考文献＞
*1 ABC NEWSサイト「Two men jailed for importing $122 million worth of ecstasy from Italy in tomato tins」(2014年7月4日)
*2 ABC NEWSサイト「Drug dealer sentenced to life for world’s largest ecstasy haul」(2012年5月25日)
https://www.abc.net.au/news/2012-05-24/drug-dealer-sentenced-to-life-in-jail-for-trafficking/4031212
*3『裏社会 噂の真相』（中野ジロー、2012年、彩図社）,p210
*4 Anna Sergi.(2012). Family influence：Italian mafia group operates in Australia. Jane’s Intelligence Review, August, p46-47
*5『猫に紅茶を 生活に刻まれたオーストラリアの歴史』（藤川隆男、2007年、大阪大学出版会）,p186-187
*6 デ・ボルトリのサイト「our-heritage」
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