アメリカ合衆国系バイカーギャング「バンディドス」（Bandidos）のヨーロッパ勢は自身のサイトで「入会条件」（Admission requirements）を示しています(*1)。
まず「21歳以上の男性」であること、加えて「ハーレーダビッドソンに乗れること」が入会志願者に求められています(*1)。
構成員（正式会員：a fully fledged member）の資格を得る為、志願者は「プロスペクト」（Prospect）と「プロベイショナリー」（Probationary）の2段階を経なければなりません(*1)。2つともいわば「試用期間」で、プロスペクトは最低12カ月、プロベイショナリーは6カ月の期間を要します(*1)。バンディドスのヨーロッパ勢は基本的に「プロスペクト」→「プロベイショナリー」→「構成員」の昇進制度をとっています(*1)。
プロスペクト期間中に以下の3条件を満たした志願者が、プロベイショナリーに昇進することができます(*1)。プロベイショナリーに昇進する3条件とは、①プロスペクト期間中に欧州ナショナル・ランに1回以上参加すること、②志願者の活動する支部の総会において「志願者の昇進」が多数決で賛成されること、③志願者の支部が属する地方メンバー協会（regional member association）の副会長（National Vice Presidente）が志願者の昇進に同意することです(*1)。
志願者の活動支部が「プロスペクト」もしくは「ハングアラウンド」（Hangaround）であれば、試用期間の長さは変わってきます(*1)。プロスペクトもしくはハングアラウンドの支部では、プロスペクト期間は最低12カ月、プロベイショナリー期間は12カ月になっています(*1)。プロスペクト期間は変わりませんが、プロベイショナリー期間が通常（6カ月）の「2倍」に設定されています。
このプロスペクトもしくはハングアラウンドの支部では、プロスペクト期間中に以下の2条件を満たした志願者が、プロベイショナリーに昇進することができます(*1)。プロベイショナリーに昇進する2条件とは、①プロスペクト期間中に欧州ナショナル・ランに1回以上参加すること、②志願者の活動支部が属する地方メンバー協会（regional member association）の副会長（National Vice Presidente）が志願者の昇進に同意することです(*1)。プロスペクトもしくはハングアラウンドの支部の場合、プロベイショナリーに昇進する際、「活動支部の総会における多数決の賛成」は必要ないのです。
地方メンバー協会のない国の支部で活動する場合は、志願者は即プロベイショナリーになれます(*1)。この場合のプロベイショナリー期間は最低12カ月となります(*1)。つまりプロベイショナリー期間が通常（6カ月）の「2倍」に設定されています。おそらくプロスペクト期間がない為の措置だと考えられます。
また新規構成員は、プロスペクトになった時を起点に5年間は、上級構成員から指導を受けなければなりません(*1)。
バンディドスはオーストラリアにも進出、最初の支部を1983年に設立しました(*2)。最初の支部は、オーストラリア系バイカーギャング「コマンチェロズ」（Comancheros）の脱退派によって担われました(*3)。
バンディドスの支部設立前にコマンチェロズは分裂していました。1983年コマンチェロズはシドニーの「シティ支部」（city chapter）と「西支部」(western chapter)に分裂しました(*4)。元々コマンチェロズはシドニーに拠点を移してから、シドニー西部の郊外を活動領域としていました(*5)。
分裂後、シティ支部は同年（1983年）内に、コマンチェロズから脱退、バンディドスに移籍しました(*3)。オーストラリア最初の支部を担ったコマンチェロズ脱退派とは、シティ支部のことだったのです。
オーストラリア最初の支部（シドニー支部）において、志願者の試用期間は15カ月でした(*6)。オーストラリアのバイカーギャング業界において試用期間の者は「ノミニー」 (nominee)と呼ばれました(*7)。
シドニー支部ではノミニーに対し「指導係」（構成員）がつきました(*6)。指導係はノミニーに対し規則等を教えました(*6)。シドニー支部の試用期間（15カ月）は「3段階」に分かれていました。
最初の段階は、入門してからの6カ月間でした(*6)。6カ月過ぎたら、該当ノミニーに対して最初の投票が実施されました(*6)。投票者は構成員でした(*6)。その投票で半数の「賛成」が得られて、また組織の規則を破っていなければ、該当ノミニーは次の段階に進みことができました(*6)。
次の段階は、入門してからの7カ月～12カ月でした(*6)。12カ月後、該当ノミニーに対して2回目の投票が実施されました(*6)。その投票で75%の「賛成」が得られて、また組織の為の貢献活動をしていれば、該当ノミニーは次の段階に進みました(*6)。
最後の段階が、入門してからの13カ月～15カ月でした(*6)。15カ月後、該当ノミニーに対して3回目の投票が実施されました(*6)。その投票で100%の「賛成」が得られれば、該当ノミニーは構成員になれました(*6)。
シドニー支部には例外もありました。「バンディレロス」（Bandileros）のトップだったバーナード・ポドゴルスキー（Bernard Podgorski）の場合、試用期間は3カ月でした(*6)。
バーナード・ポドゴルスキーは元々「ロンナーズ」(Loners)というバイカークラブの副長（Vice President）で、1983年バンディレロスを立ち上げました(*8)。ロンナーズはシドニーを拠点にしていた小規模のバイカークラブでした(*8)。
バンディレロスにはコマンチェロズの「サポートクラブ」のような役割が期待されていました(*8)。コマンチェロズの分裂後、バンディレロスは「コマンチェロズのシティ支部」（バンディドス・シドニー支部の前身）に入りました(*4)。
バーナード・ポドゴルスキーは元々幹部級の人物だった為、試用期間は短縮されても良いと考えられたのでしょう。実際その後、バンディドス・シドニー支部においてバーナード・ポドゴルスキーは「会計」（Treasurer）という役職に就きました(*9)。
2009年春時点、バンディドスはオーストラリアに35支部を擁していました(*2)。
＜引用・参考文献＞
*1 バンディドス（ヨーロッパ）のサイト「Join our movement」
https://bandidosmc.eu/join-our-movement/
*2『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』（Alex Caine，2010，Vintage Canada）,p154
*3『Brothers in Arms：Bikie Wars』（Lindsay Simpson & Sandra Harvey，2012，Allen & Unwin）,p36
*4『Brothers in Arms：Bikie Wars』,p31-33
*5『Brothers in Arms：Bikie Wars』,p25
*6『Brothers in Arms：Bikie Wars』,p37
*7 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』（Arthur Veno，2012，Allen & Unwin）, p48
*8『Brothers in Arms：Bikie Wars』,p26-27
*9『Brothers in Arms：Bikie Wars』,p38
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