アメリカ合衆国では主に2000年代後半から「白人至上主義系バイカーギャング」が登場しました(*1)。白人至上主義系バイカーギャングの中には「独立系組織」もありましたが、その他は「大手白人至上主義組織の下部団体」として活動していました(*1)。
アラバマ州では白人至上主義系バイカーギャング「サザン・ブラザーフッド・モーターサイクルクラブ」(Southern Brotherhood Motorcycle Club) が活動していました(*2)。
サザン・ブラザーフッド・モーターサイクルクラブは、白人至上主義系刑務所ギャング「サザン・ブラザーフッド」(Southern Brotherhood)の下部団体でした(*2)。「サザン・ブラザーフッド」は1995年イースターリング更生施設(アラバマ州)で結成されました(*2)。
白人至上主義系バイカーギャングの中には、大手バイカーギャングとのパイプを持つ組織もありました(*1)。白人至上主義系バイカーギャング「第1カヴァレリー旅団」（1st Kavallerie Brigade of Aryan Nations）は、「アーリアン・ネイションズ」（Aryan Nations）の下部団体でした(*1)。アーリアン・ネイションズは反ユダヤ主義（anti-Semitism）であり、白人至上主義の組織でした(*3)。リチャード・ガーント・バトラー(Richard Girnt Butler)がアーリアン・ネイションズを立ち上げました(*3)。
アーリアン・ネイションズの一派が2008年前半、第1カヴァレリー旅団を結成しました(*1)。第1カヴァレリー旅団はフロリダ州とテネシー州に拠点を置いていました(*1)。第1カヴァレリー旅団のフロリダ勢は、大手バイカーギャング「アウトローズ」（Outlaws）フロリダ支部とのパイプを持っていました(*1)。
一方、独立組織としては「サンズ・オブ・エイズィア」（Sons of Aesir）(*4)、「ホワイト・ボーイ・ソサイアティ」（White Boy Society）(*5)等の白人至上主義系バイカーギャングが活動していました。
サンズ・オブ・エイズィアは2005年に結成され、アリゾナ州を拠点に活動してきました(*4)。2011年時点でサンズ・オブ・エイズィアの構成員数は数十人であり、小規模な組織でした(*4)。構成員の大半は、フェニックス（アリゾナ州の州都）に暮らす中年男性達でした(*4)。サンズ・オブ・エイズィアはフェニックスにクラブハウスを構えていました(*4)。フェニックスには州間高速道路10号線、17号線が通っています。また構成員は彫物師、パイプ敷設職人、レッカー車の運転手等の本業を持っていました(*4)。一方で構成員の多くは犯罪歴を持っていました(*4)。サンズ・オブ・エイズィアの構成員は大手バイカーギャングの「ヘルズ・エンジェルス」（Hell’s Angels）の構成員と親交を持っていました(*4)。
ホワイト・ボーイ・ソサイアティは2006年、イリノイ州のウィリアム・デボア（William DeBoer）によって結成されました(*5)。ホワイト・ボーイ・ソサイアティはイリノイ州以外の州でも拠点を置いていました(*5)。しかし2009年前半テキサス州、ルイジアナ州、フロリダ州、ジョージア州などの南部勢がホワイト・ボーイ・ソサイアティを脱退、新団体「ホワイト・ライダース・ライディング・クラブ」（White Riders Riding Club）を発足させました(*5)。
2009年6月ホワイト・ボーイ・ソサイアティは、従来の「ピラミッド型の指導体制」から、伝えられるところによれば「指導者なき抵抗」（leaderless resistance）の理論に基づく組織体制に改めました(*5)。
2011年時点においてホワイト・ボーイ・ソサイアティの構成員数は少なかったです(*5)。しかし白人至上主義組織や白人至上主義傾向のバイカークラブはホワイト・ボーイ・ソサイアティを支援していました(*5)。
またミシシッピ州（アメリカ合衆国南部）のガルフポートでは独立系の白人至上主義系バイカーギャング「ノースメン・クラン」（Norsemen Clan）が活動していました(*6)。ガルフポートは、メキシコ湾岸に位置しています。ガルフポートには州間高速道路10号線が通っています(*7)。1991年時点、州間高速道路10号線がガルフポートには通っていました(*8)。
ノースメン・クランにおいて大半の構成員は正業時、沖合の石油掘削施設で働いていました(*6)。ノースメン・クランは人種差別主義、反ユダヤ主義（anti-Semitic）をとっていました(*6)。
沖合の石油掘削施設における勤務スケジュールは不規則の為、ノースメン・クランは組織化には苦労してきました(*6)。加えてノースメン・クランの悩みとしては、構成員の脱退（移籍）がありました(*6)。ノースメン・クラン立ち上げメンバーの1人だったクリストファー・“ロック”・アダムス（Christopher“Rock”Adams）は2009年11月ノースメン・クランを脱退し、大手バイカーギャング「アウトローズ」に移籍しました(*6)。
違法薬物ビジネスを手掛けていた白人至上主義系バイカーギャングもありました。「ペッカーウッズ」(Peckerwoods)は小規模な白人至上主義系バイカーギャングで、カリフォルニア州サンディエゴ郡を拠点に活動していました(*9)。サンディエゴ郡のサンティー、レイクサイド、ラ・メサ、エルカホンがペッカーウッズの活動範囲でした(*9)。ペッカーウッズは独立組織でした(*9)。
「アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局」（Alcohol,Tobacco,Firearms and Explosives:ATF）のロサンゼルス支局とサンディエゴ郡保安官事務所は2006年からペッカーウッズの調査を開始、翌年（2007年）7月に銃器24丁、マリファナ、マリファナプランツ、メタンフェタミンの押収に至りました(*9)。加えて処方薬のオキシコドン（Oxycodone）600錠、処方薬のパーコセット（Percocet）100錠、処方薬のバイコディン（Vicodin）50錠も押収されました(*9)。また多数のペッカーウッズ構成員が逮捕、有罪判決を受けました(*9)。以上から、ペッカーウッズが違法薬物ビジネスを手掛けていたことが分かります。
＜引用・参考文献＞
*1 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp12
*2 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp13
*3 ADL(Anti-Defamation League)のサイト「Aryan Nations/Church of Jesus Christ Christian」（2017年2月5日）
https://www.adl.org/resources/profile/aryan-nationschurch-jesus-christ-christian
*4 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp15
*5 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp17-18
*6 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp20
*7 連邦幹線道路局（Federal Highway Administration）サイト「FHWA Route Log and Finder List ：Table 1 – Main Routes」
*8 連邦幹線道路局（Federal Highway Administration）サイト「1991 Federal Aid Primary (FAP)」
*9 ADL(Anti-Defamation League)’s comprehensive report.(2011). Bigots on Bikes: The Growing Links between White Supremacists and Biker Gangs. September.pp19
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