2018年時点、日本の海運会社は「スエズ運河のコンテナ船通航料」として、1回につき約52万ドルをスエズ運河庁に支払っていました(*1)。また同時期「パナマ運河のコンテナ船通航料」として、日本の海運会社は、1回につき約53万ドルをパナマ運河庁に支払っていました(*1)。
図 スエズ運河の地図(出典:Googleマップ)
図 パナマ運河の地図(出典:Googleマップ)
海運会社とは「船舶運航業者」のことです(*2)。船舶運航業者は「オペレーター」とも呼ばれています(*2)。海運会社(船舶運航業者)の多くは、自社船を保有している為、船主(オーナー)でもあります(*2)。しかし時には海運会社は他社から船舶を借りて、運航することもあります(*2)。海運会社は、荷主の貨物を海上輸送することで、荷主から運賃をとっています。
荷主(にぬし)とは「貨物の法的所有権を持つ者」のことです(*3)。メーカー、卸売業、小売業が、物流業者に輸送や保管を委託した際、「荷主」と呼ばれます(*3)。
「東南アジア以西のエリア」から「アメリカ合衆国の東海岸」に貨物を海上輸送する際、海運会社は概ねスエズ運河経由の経路を利用しました(*4)。スエズ運河→地中海→大西洋の経路でアメリカ合衆国東海岸に貨物が運ばれていたのです(*4)。一方「日本や中国本土」から「アメリカ合衆国の東海岸」に貨物を海上輸送する際、海運会社は概ねパナマ運河経由の経路を利用しました(*4)。
スエズ運河経由経路の迂回経路としては、喜望峰回りがありますが、航行日数が長くなります。喜望峰回りの場合、スエズ運河経由経路に比し、航海日数が10日以上長くなります(*5)。喜望峰回りでは、当然「スエズ運河のコンテナ船通航料」は発生しませんが、用船料、燃料、乗組員の賃金等のコストが増えます(*5)。
昨年(2023年)11月、イエメンの武装組織フーシ派が、イエメン沖で商船を攻撃し始めました(*6)。フーシ派の商船に対する攻撃は、2024年2月までに40件を超えました(*6)。よって主要海運会社はスエズ運河経由経路を避け、喜望峰回り経路を選択するようになりました(*6)。
<引用・参考文献>
*1 『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!』(松田琢磨、2023年、KADOKAWA), p160-161
*2 『基本ロジスティクス用語辞典 〔第3版〕』「船舶運航業者」(三木楯彦、2009年、白桃書房),p103
*3 『基本ロジスティクス用語辞典 〔第3版〕』「荷主」(中田信哉、2009年、白桃書房),p138
*4 『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!』, p231,283
*5 『選択』2024年4月号「海運「再混乱」は長く深刻に」
*6 『週刊エコノミスト』2024年4月23日号「パナマ&スエズ 両運河が同時に通航支障 影響限定的も長期化懸念」(後藤洋政/松田琢磨), p88-89
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