山口組内の4つのポスト

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 2023年山口組は、指定暴力団の中で最多構成員数(約3,500人)を擁していました(*1)。2番目は約2,200人の住吉会、3番目が約1,700人の稲川会でした(*1)。

 また2023年山口組の活動範囲は、1都1道2府40県でした(*1)。住吉会は1都1道1 府14県、稲川会は1都1道15県を活動範囲としていました(*1)。

 「構成員数」「活動範囲」の点から現在、山口組が「日本最大のヤクザ組織」といってよいでしょう。

 2015年8月、13団体が山口組から脱退、山口組は分裂に至りました。しかし脱退派の山健組一部勢力(健竜会、妹尾組等)が2021年山口組に戻る(*2)等、脱退派の力は落ちています。

 2015年以前の山口組には、主要2次団体がいくつかありました。主要2次団体として挙げられたのは弘道会、山健組、宅見組、極心連合会などでした。山健組と宅見組は脱退派で、勢力を減らしてしまっています。また極心連合会は解散しました。

 一方、弘道会は概ね勢力を保っていると考えられます。また現在の山口組トップ、ナンバー2ともに弘道会出身者です(*3) (*4)。他の主要2次団体が消えた為、相対的に、弘道会の力が突出した状態になっています。

 弘道会は「山口組内の主要2次団体」ではなく、「山口組内の指導的勢力」に近い性格を有しています。

 ゆえに弘道会トップ(会長)、ナンバー2(若頭)も山口組内では大きな力を持つに至っていると考えられます。

 山口組に関しては度々「次期トップ(七代目)」の話題が時々上がります。

 次期体制の山口組では「山口組組長」(1次団体トップ)、「山口組若頭」(1次団体のナンバー2)、「弘道会会長」(2次団体トップ)、「弘道会若頭」(2次団体のナンバー2)の4つのポスト(役職)が重要となるでしょう。

 過去を振り返ると、4ポストの推移(2005年8月~現在)は、以下の通りです。

【2005年8月以降の4ポスト】

山口組組長:司忍(2005年8月就任) (*3)

山口組若頭:髙山清司(2005年8月就任) (*4)

弘道会会長:髙山清司(2005年3月就任) (*4)

弘道会若頭:竹内照明(2005年3月以降、一度「弘道会若頭補佐」を経た後に、就任) (*5)

*竹内照明は同時に髙山組(3次団体)組長にも就いていました(2005年3月以降) (*5)

【2013年9月以降の4ポスト】

山口組組長:司忍

山口組若頭:髙山清司

弘道会会長:竹内照明(2013年9月就任)(*6)

弘道会若頭: 中野寿城(2013年9月以降就任)(*6)

*南正毅が髙山組組長に2013年9月以降就任(*5)

【2019年以降の4ポスト】

山口組組長:司忍

山口組若頭:髙山清司

弘道会会長:竹内照明

弘道会若頭: 野内正博(2019年就任)(*7)

  4ポストの序列は、「山口組組長」>「山口組若頭」>「弘道会会長」>「弘道会若頭」となっています。

 しかし今後、弘道会以外の2次団体トップが「山口組組長」もしくは「山口組若頭」に就任すると、この序列は機能しないかもしれません。

 例えば将来X組トップAが山口組組長、Y会トップBが山口組若頭に就任したとします。X組、Y会ともに山口組2次団体とします。そして弘道会が依然、指導的勢力だったとします。その場合「弘道会会長」>「弘道会若頭」>「山口組組長」>「山口組若頭」という序列が形成される可能性があります。1次団体トップ及びナンバー2が「名誉職」になってしまう形です。

 海外を見ると、似た事例を見つけることができます。ベトナムの国家機構においてはベトナム共産党が指導的勢力です(*8)。ゆえにベトナム政界の序列は、第1位が「共産党の書記長」、第2位「国家主席」、第3位「首相」、第4位「国会議長」となっています(*9)。ベトナムでは共産党トップ(書記長)が、国家機構トップ(国家主席)よりも力を持っているのです。

 現実的には弘道会出身者が今後も山口組組長、山口組若頭のポストに就いていくでしょう。

  4ポストの形に関しては、3パターンが考えられます。

  • 4人体制…4人(A~D)が重複することなく各ポストに就きます。現在の体制です。

山口組組長:A

山口組若頭:B

弘道会会長:C

弘道会若頭: D

  • 3人体制(山口組若頭と弘道会会長の兼任)…2005年8月~2013年9月までは、この体制でした。

山口組組長:A

山口組若頭:B

弘道会会長:B

弘道会若頭: C

  • 3人体制(山口組組長と弘道会会長の兼任‥「1次団体トップ」と「2次団体トップ」の兼任は、山口組の歴史においてありません。

山口組組長:A

山口組若頭:B

弘道会会長:A

弘道会若頭: C

 最後に2023年山口組構成員数(約3,500人)を、海外のバイカーギャングと照らし合わせて、考えてみます。海外のバイカーギャング業界では1支部あたり「構成員数の上限」は大抵24人です(*10)。

 構成員数3,500人(山口組とほぼ同じ)のバイカーギャングがあったとすると、そのバイカーギャングは約146支部(3,500÷24)を作ることができます。

 ちなみに構成員数2,200人(住吉会とほぼ同じ)のバイカーギャングの場合、そのバイカーギャングは約92支部(2,200÷24)を作ることができます。

 また構成員数1,700人(稲川会とほぼ同じ)のバイカーギャングの場合、そのバイカーギャングは約71支部(1,700÷24)を作ることができます。

<引用・参考文献>

*1 警察庁「令和5年における 組織犯罪の情勢」(2024年),p26

*2 『週刊実話』2021年11月25日号, p36-37

*3 『六代目山口組10年史』(2015年、メディアックス),p17

*4 『六代目山口組10年史』,p18

*5 『実話時代』2016年10月号, p31

*6 『週刊実話』2016年6月16日号, p34

*7 『週刊実話』2019年11月28日号, p32

*8 『ヴェトナム新時代 ―「豊かさ」への模索』(坪井善明、2015年、岩波新書), p112-113

*9 『週刊エコノミスト』2024年7月9日号「ベトナム 共産党最高幹部が相次ぎ辞任 経済・外交保守化へ懸念浮上」(石塚二葉), p34-35

*10 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin), p80-81

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