暗号資産は、ビッコイン(Bitcoin)の誕生によって、始まりました(*1)。2008年10月「サイファーパンク」という暗号技術研究に熱心な開発者グループのメーリングリスト内で「ビットコイン:P2P電子マネーシステム」(Bitocoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System)という題名の論文が「サトシ・ナカモト」(Satoshi Nakamoto)によって発表されました(*1)。その後サイファーパンク内の有志メンバーが、その論文を研究、仕組みを明らかにし、ビッコトインを開発していきました(*1)。
翌2009年1月ビッコトインが発行されました(*2)。2010年5月22日には、2枚のピザと1万BTC(ビッコトインの単位)が交換されたことで、ビッコトインは決済として初めて用いられました(*2)。
以降、ビットコイン以外の暗号資産が続々と発行されていきました(*2)。ビットコイン以外の暗号資産は「アルトコイン」と総称されました(*2)。
ビットコインの総発行量は2,100万枚です(*3)。一定量の新規ビットコインが10分間隔で発行される一方、4年ごとに新規発行量は半減する仕組みがとられています(*3)。
暗号資産は、中央銀行のような特定の主体によってではなく、ブロックチェーン(暗号技術を組み合わせて複数のコンピュータで取引情報などのデータを同期して記録する仕組み)によって管理されています(*4)。
また暗号資産の特徴の1つとして、金融機関を仲介しないで個人同士で直接取引できることがあります(*5)。直接取引を可能にしているのが、「取引の検証及び承認作業」です(*5)。取引の検証及び承認作業は「マイニング(採掘)」と呼ばれ、またマイニングを行う者は「マイナー(採掘者)」と呼ばれています(*6)。
1件のビッコトイン取引において、マイナーによる検証及び承認作業は約10分かかりました(*6)。
ビットコインの取引は全て、10分ごとに、最大1メガバイトのブロックにまとめられました(*7)。最大1メガバイトのブロックには、約2,500件の取引がありました(*7)。取引内容は「公開台帳」に記録され、公開台帳は誰でも見ることができました(*7)。
マイナーは検証及び承認作業の報酬として「新規発行のビットコイン」を受け取りました(*6)。先述した一定量の新規発行のビットコインは、マイナーに渡されていたのでした(*6)。
2020年5月11日以降、検証及び承認作業の報酬として、1ブロックあたり6.25BTCがマイナーに払われました(*6)。また先述したように、ビットコインは4年ごとに新規発行量が半減しました。2020年5月11日がその半減期でした(*6)。2020年5月11日より前は、検証及び承認作業の報酬として、1ブロックあたり12.5BTCがマイナーに払われていました(*6)。
直近では2024年4月20日が半減期でした(*8)。ビットコイン市場は、半減期前には価格が上昇し、半減期後には下落する傾向があります(*8)。また半減期後の半年から1年で価格は急騰する傾向もあります(*8)。
国際送金において暗号資産の需要がありました(*9)。銀行での国際送金では、着金までに数日要し、送金手数料も高かったです(*9)。一方、暗号資産での送金は、どの国や地域においても、その日のうちに送金ができました(*9)。また暗号資産の送金手数料は安かったです(*9)。
裏社会においても暗号資産の需要がありました。ダークウェブの闇市場サイトではビットコインが主に決済手段として用いられていました(*10)。闇市場サイトでは主に違法薬物が販売されており、加えて銃器や盗まれたクレジットカード等も販売されていまいた(*10)。時代が進むと、闇市場の決済手段として、ビットコインではなくモネロ(Monero)という暗号資産が好まれるようになりました(*10)。モネロでは、取引内容の秘匿化が行われていました(*10)。
メキシコ麻薬カルテルも近年、資金洗浄の一環として、暗号資産を使ってきました(*11)。メキシコ麻薬カルテルの資金洗浄係は、アメリカ合衆国内で密売人から現金を受け取り、その密売人に暗号資産を渡しました(*11)。密売人はその暗号資産でメキシコもしくは他国に送金しました(*11)。その後、暗号資産は現地通貨と交換されました(*11)。メキシコ麻薬カルテルは、資金洗浄において暗号資産を「介在物」として利用していたことがわかります。
ビットコインを法定通貨として採用する国が出てきました。エルサルバドルは2021年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨にしました(*12)。エルサルバドルでは米ドルも法定通貨でした(*13)。また中央アフリカも2022年4月、世界で2番目にビットコインを法定通貨にしました(*12)。
<引用・参考文献>
*1 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』(松嶋真倫、2023年、あさ出版), p30-31
*2 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p46
*3 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p34
*4 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p40
*5 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p53
*6 『教養としての決済』(ゴットフリート・レイブラント/ナターシャ・デ・テラン著、大久保彩訳、上野博監修、2022年、東洋経済新報社), p291-293
*7 『教養としての決済』,p290
*8 『週刊エコノミスト』2024年8月20日号「ビットコイン 米大統領選後に上昇段階へ 年末10万ドル予想は通過点」(松田康生),p89
*9 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p64-66
*10 『ダークウェブの教科書』(Cheena、2019年、データハウス), p28-30
*11「2024全米麻薬脅威評価(National Drug Threat Assessment 2024)」(アメリカ合衆国麻薬取締局、2024年),p48
https://www.dea.gov/sites/default/files/2024-05/NDTA_2024.pdf
*12 『暗号資産をやさしく教えてくれる本』, p122-123
*13 『週刊金曜日』2021年10月22日号「エルサルバドル・ブケレ大統領が放った矢 なぜビットコインを自国通貨化か」(石井陽一),p42
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