2015年以前のベラルーシでは密輸が流行っていました(*1)。ベラルーシは内陸国で、東隣にはロシア、北隣にはラトビアとリトアニア、西隣にはポーランド、南隣にはウクライナが位置しています。
ラトビア、リトアニア、ポーランドは2004年、欧州連合(EU)に加盟しました(*2)。2004~2015年ラトビア、リトアニア、ポーランドの3カ国はEU加盟国だったのです。
国境当局者によると、2015年以前、ベラルーシの対EU密輸品では煙草(cigarettes)が最も多かったです(*1)。
また当時ロシアからベラルーシ経由でEUに密輸されているものがあり、その中では煙草と酒が上位に位置しました(*1)。
一方EUからは主に衣服、食料品、麻薬(Drugs)がベラルーシ及びロシアに密輸されていました(*1)。
ベラルーシでは密輸における主な国境越えとしては、国境検問所に申告せずに密輸品を運ぶ方法、森や川を通って越境する方法がありました(*1)。
公の統計によると、ベラルーシの煙草市場は年間200億本であった一方、同国では年間300億本の煙草が製造されていました(*1)。つまり毎年100億本の煙草が国外に密輸されていたのです(*1)。
ベラルーシでは煙草銘柄「NZ」「Minsk」「Viceroy」の価格(1箱)は、0.37ポンド未満でした(*1)。一方EU加盟国では、各国の課税率によりますが、同様の銘柄の価格(1箱)は、2~6ポンドでした(*1)。
ベラルーシの煙草会社JSCグロドノ・タバコ工場ネマン(JSC Grodno Tobacco Factory Neman)のサイトによれば、JSCグロドノ・タバコ工場ネマンは2015年以前に「NZ」「Minsk」という銘柄を発売していました(*3)。
現在のJSCグロドノ・タバコ工場ネマンは285億本の煙草を製造し、ベラルーシ産煙草の72%を占めています(*4)。
仮に密輸チームがベラルーシで「NZ」100箱を1箱0.35ポンドで仕入れ、EU加盟国のある国で「NZ」100箱を1箱2ポンドで販売したとします。その場合、仕入れ費用は35ポンド、売上は200ポンド、利益は165ポンドになります。利益率(売上高に対する利益の割合)は82.5%になります。
密輸された煙草は「違法煙草」になります。
違法煙草には、「密輸煙草」(Contraband)、「偽造煙草」(Counterfeit)、「イリシト・ホワイツ」(Illicit Whites)の3つがあります(*5) 。
密輸煙草とは、煙草税の低率国で購入された後に、他国に密輸された煙草を指します (*5)。また高価格帯市場の国における再販売目的で、納税なしに「輸出」(つまり密輸)されたものも、密輸煙草に該当します(*5)。「密輸煙草」の煙草自体は、合法的に製造されたものです(*5)。
偽造煙草とは、違法に製造及び販売されたものを指します(*5)。
イリシト・ホワイツとは、ある国や市場において合法的に製造されているが、実態は「密輸目的で製造されている」と指摘される煙草を指します(*5)。またイリシト・ホワイツの中には「国別表示なし」(no country‐specific labelling)のものもありました(*5)。
以上から、2015年以前のベラルーシにおいてEUに密輸された煙草は、「密輸煙草」(Contraband)もしくは「イリシト・ホワイツ」(Illicit Whites)であったことがわかります。
<引用・参考文献>
*1 Vadzim Smok. The art of smuggling in Belarus.open Democracy:Russia.2 February 2015.
https://www.opendemocracy.net/en/odr/art-of-smuggling-in-belarus
*2 外務省サイト「EU加盟国と地図 第5次拡大」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/map_05.html
*3 JSC Grodno Tobacco Factory Nemanサイト「Our Brands」
https://www.tabak.by/en/our-business/nashi-marki
*4 JSC Grodno Tobacco Factory Nemanサイト「About company」
https://www.tabak.by/en/company
*5『Illicit cigarette consumption in the EU, UK, Norway and Switzerland 2021 results』(KPMG LLP,2022),p2-3
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