2010年のピエドラス・ネグラス

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 メキシコのコアウイラ州にピエドラス・ネグラスという街があります。コアウイラ州の西側にはチワワ州、東側にはヌエボレオン州、北側にはアメリカ合衆国のテキサス州があります。ピエドラス・ネグラスは「アメリカ合衆国との国境地帯」に位置し、国境を超えた先にイーグル・パス(テキサス州)があります。

 「メキシコのピエドラス・ネグラス」と「アメリカ合衆国のイーグル・パス」の間には、リオ・グランデ川が流れており、両国の「国境線」にもなっています。

 シウダー・フアレス(チワワ州)とエル・パソ(テキサス州)の以東においては、リオ・グランデ川が、メキシコとアメリカ合衆国の国境線になっています(*1)。

 2010年ピエドラス・ネグラスは「セタス」(Zetas)の縄張りの1つでした(*2)。セタスは元々、メキシコ北東部(主にタマウリパス州)を拠点とするガルフ・カルテル(Gulf Cartel)の「戦闘部隊」として結成されました(*3)。2010年2月セタスは、ガルフ・カルテルから脱退、独立団体となりました(*4)。

 セタスは2002年3月ヌエボ・ラレド(タマウリパス州)に侵攻、同年5月までにヌエボ・ラレドの縄張りを「ロス・チャチョス」(Los Chachos)から奪取しました(*5)。ロス・チャチョスはヌエボ・ラレドのアウトロー組織で、2002年時に300人程度の構成員を擁していました(*5)。

 加えてロス・チャチョスは「フアレス・カルテル」(Juárez Cartel)とミレニオ・カルテル(Milenio  Cartel)の「代理人」の役割も担っていました(*5)。つまり2002年5月まではフアレス・カルテルとミレニオ・カルテルがヌエボ・ラレドを「間接統治」していたのです。

 元々「シウダー・フアレス-ヌエボ・ラレド間」は、フアレス・カルテルの縄張りとされていました。

 1989年夏アカプルコ(ゲレーロ州)に当時の麻薬組織トップらが集まりました(*6)。その会議においてメキシコ国内の縄張りが再編成されました(*7)。収監中のミゲル・アンヘル・フェリックス・ガジャルド(Miguel Ángel Félix Gallardo)が、その再編成を主導しました(*7)。

 1989年夏アカプルコの会議において、ピエドラス・ネグラス(コアウイラ州)が含まれる「シウダー・フアレス-ヌエボ・ラレド間」は、ラファエル・アギラール・グアハルド(Rafael Aguilar Guajardo)の縄張りと定められました(*7)。

 ラファエル・アギラール・グアハルドは、1980年代後半から1993年まで、シウダー・フアレスの違法薬物ビジネスを仕切っていました(*8)。ラファエル・アギラール・グアハルドがフアレス・カルテルの始祖でした(*8)。

 しかし2002年5月からはガルフ・カルテルが「ヌエボ・ラレドの支配権」を握ったのです。

 この2002年3月ヌエボ・ラレド侵攻は「セタスの初陣」とされています(*5)。セタスは2002年5月13日ロス・チャチョスの指導者を誘拐、翌日その指導者の遺体が切断された状態で発見されました(*5)。

 ヌエボ・ラレドからリオ・グランデ川を渡ると、アメリカ合衆国のラレド(テキサス州)があります。ラレドは州間高速道路35号線において「南の終点」になります。ラレドからは高速道路を利用することができるのです。一方、イーグル・パスには州間高速道路は通っていません。

 2010年「アメリカ合衆国のイーグル・パス」→「メキシコのピエドラス・ネグラス」、また「アメリカ合衆国のラレド」→「メキシコのヌエボ・ラレド」の経路において、銃器がメキシコに密輸されていました(*2)。ジャーナリストのヨアン・グリロは、アメリカ合衆国側の「運び人」がアメリカ合衆国側の国境近くまで銃器を運び、そこからセタスがメキシコに運んでいったと推測しています(*2)。

<引用・参考文献>

*1 『エリア・スタディーズ91  現代メキシコを知るための70章』「メキシコと米国の国境地帯-21世紀における国境の意味」(G・カレーニョ/長岡誠、2019年、明石書店),p109

*2 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』(Ioan Grillo,2021,Bloomsbury Publishing  Plc),p65-66

*3 『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』(ヨアン・グリロ著、山本昭代訳、2014年、現代企画室), p140-146

*4 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』(ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子/中島知子訳、2015年、河出書房新社),p137

*5 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』(David F. Marley,2019,Abc-Clio Inc), p286-288

*6 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』, p115

*7 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』, p248-249

*8 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』, p194-195

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