ドキュメンタリー映画プロデューサー兼ライターのドミニク・ストリートフィールド(Dominic Streatfeild)はコロンビア南部においてフェリックス(Felix)という名のコカ葉栽培者(cocalero)に出会い、取材することになりました(*1)。フェリックスは25歳の男でした(*1)。コカ葉はコカインの原料です。
フェリックスは2ヘクタールの畑でコカ葉を栽培していました(*2)。1ヘクタールを平方メートル(㎡)に直すと、1万㎡(100m×100m)になります。コカ葉は一般に標高500~1,500mで生育しました(*3)。フェリックスは2ヘクタール(2万㎡)の畑でコカ葉を年間で6回収穫しました(*2)。
コカ葉は、年間2~6回収穫可能でした(*3)。振れ幅が大きい背景には、栽培地域の気候や土壌の自然環境条件、コカ葉の品種、施肥や除草などの手入れによって、年間収穫回数が変動することがありました(*3)。品種に関しては、コカ・ドゥルセという品種は、約90日ごとに収穫可能でした(*3)。またクワレンタナという品種は、約60日ごとに収穫可能でした(*3)。
ボリビアのユンガス地帯ではコカ葉の収穫回数は「年3回」でした(*4)。
またジャーナリストのロベルト・サヴィアーノは書籍において、コカ葉の収穫回数を「年3回」と記載していました(*5)。コカ葉及びコカインビジネス関係者の間では、「年3回」が「収穫回数の最頻値」として認識されていたのかもしれません。コカ葉の場合、種蒔きから最初の摘み取りまで8か月掛かりました(*3)。
フェリックスの畑において1回のコカ葉収穫量は約1,250ポンドでした(*2)。年間の収穫量は、約7,500ポンド(1,250ポンド×6回)となりました(*2)。1ポンドをkgに直すと、約0.454kgになります。7,500ポンド(約3,405kg)のコカ葉からは、約5kgのコカ・ペーストが作られました(*2)。フェリックスはコカ・ペースト作りまで行いました(*1) (*2)。
従事者はコカ葉を収穫後すぐに、乾燥させました(*4) (*5)。ボリビアのユンガス地帯では、コカ葉を収穫から48時間以内に乾燥させないと、コカ葉は変色し、商品価値が落ちました(*4)。一方、先述のロベルト・サヴィアーノは書籍において、コカ葉は収穫後「24時間以内」に乾燥させないと質が落ちると述べていました(*5)。
その後、コカ葉は「パスタ状」に加工されました(*6)。このパスタ状のものが、コカ・ペーストです。コカ・ペーストは別名「パスタ」(pasta)、「パスタ・バシカ」(pasta basica)、「バズコ」(bazuko)、「バセ」(basé)と呼ばれていました(*7)。
コカ・ペーストは泥状で、色はオフホワイトでした(*7)。一般的にコカ・ペーストの形態で取引がなされました(*7)。
その後、コカ・ペーストから2つの工程を経て、コカイン(コカイン塩酸塩:cocaine hydrochloride)が作られました(*2)。まず1つ目の工程において、溶剤でコカ・ペーストを溶かし、再凝固させました(*2)。この再凝固させたものは「パスタ・ラバダ」(pasta lavada:洗われたパスタ)と呼ばれました(*2)。2つ目の工程は、パスタ・ラバダをより純度の高い溶剤で再精製し、結晶化させました(*2)。この結晶がコカインでした(*2)。
先述のフェリックスは、この2つの工程が行われている工場の場所を知りませんでした(*2)。
結局、フェリックスのコカ・ペースト5㎏からは、およそ純正コカイン2.25kgが作られたと考えられました(*2)。
コカインの主な摂取方法は、鼻からの吸引です(*8)。コカイン常用者による1回の使用量は、通常0.015~0.03gといわれていました(*9)。
コカインは末端小売市場では1gずつで販売されました(*10)。末端小売市場に供給されるまでに「純正コカイン1kg」は「混ぜ物入りコカイン約3kg」に変わっていました(*10)。コカインの重量が、混ぜ物入りによって、200%増加していることがわかります。
<引用・参考文献>
*1 『Cocaine: An Unauthorized Biography』(Dominic Streatfeild,2003,Picador), p461-462
*2 『Cocaine: An Unauthorized Biography』, p464
*3 『エリア・スタディーズ90 コロンビアを知るための60章』「コカ コロンビアにおけるコカ栽培の諸相」(千代勇一、2011年、明石書店),p55-56
*4 『エリア・スタディーズ54 ボリビアを知るための73章 【第2版】』「コカとアンデス高地農民の生活」(国本伊代、2013年、明石書店),p191-192
*5 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』(ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子/中島知子訳、2015年、河出書房新社),p105
*6 『コロンビア内戦―ゲリラと麻薬と殺戮と』(伊高浩昭、2003年、論創社), p113
*7 『Cocaine: An Unauthorized Biography』, p273
*8 『<麻薬>のすべて』(船山信次、2011年、講談社現代新書),p108
*9 『<麻薬>のすべて』,p111
*10 『コカイン ゼロゼロゼロ 世界を支配する凶悪な欲望』,p106-107
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