コンゴ民主共和国では都市型青年ギャング「クルナ」（Kulunas）が21世紀初期から活動していました(*1)。
首都キンシャサでは「レ・サロパー」（Les Salopards）、「BBT」、「ビック・ルージュ」（Bic rouge）等の青年ギャングが活動しており、クルナを構成していました(*2)。クルナとは、都市型青年ギャングの総称だったのです。
当初クルナ系ギャングは主にキンシャサで活動していましたが、次第に他の都市にも進出していきました(*1)。
各クルナ系ギャングは縄張りを持っていました(*2)。各クルナ系ギャングにとって「縄張り内を通った外部者」は襲撃対象でした(*2)。一方「縄張り内に住む者」は襲撃対象ではなかったです(*2)。
また複数のクルナ系ギャングが同じ地域に併存する場合もありました(*2)。
コンゴ民主共和国の政治家は、自身の政治活動においてクルナ系ギャングを「活用」していました。クルナ系ギャングは客である政治家の保護に加えて、ライバルの政治家に対する脅迫、政治集会の妨害等を担いました(*3)。政治家側はクルナ系ギャングに「使用料」を日割りで払いました(*3)。料金の相場は1,000～3,000コンゴ・フラン（0.5～1.5米ドル）でした(*3)。
またコンゴ民主共和国の警察官や軍人の中にはクルナ系ギャングの「協力者」がいました。一部の警察官や軍人は、クルナ系ギャングから賄賂をもらう代わりに、クルナ系ギャングの違法活動を黙認していました(*4)。加えて警察官及び軍人側は、クルナ系ギャング側に武器や情報等を供給し、また盗品を転売していました (*4)。また警察官及び軍人側が、クルナ系ギャングに違法活動（主に窃盗、強盗）を依頼することもありました(*4)。
一方、コンゴ民主共和国政府は専従部隊を設立し、「リコフィ作戦」（Likofi operation）の下、2013年11月からクルナ系ギャングを取り締まりました(*5)。Likofiとはリンガラ語で「鉄拳」を意味しました(*5)。リコフィ作戦は翌2014年2月まで続きました(*5)。リコフィ作戦により、多くのクルナ系ギャング構成員らが、隣国コンゴ共和国の首都ブラザヴィルに逃げていきました(*5)。キンシャサからコンゴ川を挟んだ対岸にブラザヴィルは位置しています(*5)。
＜引用・参考文献＞
*1 Marc-André Lagrange and Thierry Vircoulon.(2021). CRIMINALS OR VIGILANTES? – The Kuluna Gangs of the Democratic Republic of Congo. Global Initiative Against Transnational Organized Crime.pp1
*2 Marc-André Lagrange and Thierry Vircoulon.(2021). CRIMINALS OR VIGILANTES? – The Kuluna Gangs of the Democratic Republic of Congo. Global Initiative Against Transnational Organized Crime.pp4-5
*3 Marc-André Lagrange and Thierry Vircoulon.(2021). CRIMINALS OR VIGILANTES? – The Kuluna Gangs of the Democratic Republic of Congo. Global Initiative Against Transnational Organized Crime.pp7
*4 Marc-André Lagrange and Thierry Vircoulon.(2021). CRIMINALS OR VIGILANTES? – The Kuluna Gangs of the Democratic Republic of Congo. Global Initiative Against Transnational Organized Crime.pp9
*5 Marc-André Lagrange and Thierry Vircoulon.(2021). CRIMINALS OR VIGILANTES? – The Kuluna Gangs of the Democratic Republic of Congo. Global Initiative Against Transnational Organized Crime.pp11
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