覚醒剤流通の仕組み

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 ヤクザ組織の大きな収入源に、麻薬の一種・覚醒剤販売があります。多くのヤクザ組織は覚醒剤をはじめとした麻薬稼業及び使用を固く禁止しています。しかし麻薬禁止の効力が及んでいるのはヤクザ組織の1次、2次団体までです。下部の3次、4次団体は、覚醒剤販売で違法な収益をあげています。

*今回記事を作成するにあたり、『現代ヤクザのウラ知識』(溝口敦、1999年、宝島社文庫)、『初等ヤクザの犯罪学教室』(浅田次郎、1998年、幻冬舎アウトロー文庫)、『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版)、『日刊ゲンダイ』2014 年10月21日号(20日発行)の情報を参考にさせて頂きました。

 1次、2次の上部団体は、傘下に収める下部団体から上納金を徴収します。上部団体が、上納金の中身つまり稼業を細かく問うことはありません。結局、上部団体は「覚醒剤禁止」を謳いながらも、覚醒剤の収益を収めているのです。言い換えれば、上部団体が覚醒剤稼業を下部団体に「暗黙裡に委託させている」と言えます。ヤクザ組織において、「摘発の危険」は下部団体に流れていき、「違法収益」は上部団体に流れていきます。

 覚醒剤は化学物質から造られています。覚醒剤にも種類がありますが、日本で流通している覚醒剤はメタンフェタミンという化学物質です。日本社会とは「長い付き合い」があります。覚醒剤取締法が制定され違法薬物となる1951年まで、メタンフェタミンは薬局で販売されていました。実用的な面として、眠気を覚ます必要がある夜間労働者に使用されていました。現在も覚醒剤の需要が存在しています。違法薬物の為、覚醒剤は高額になりました。

 現在、眠気覚まし目的で、購入する人は少ないです。主な目的は、気分の高揚です。体に入れた瞬間寒気を感じます。覚醒剤が別名「冷たいの」と呼ばれる由縁です。寒気の後に、辛いことを忘れ、幸せな気分に浸れることができます。また覚醒剤使用は性的興奮を増幅させる機能があります。肌が敏感になり、通常時に何も感じなかった接触でも性的興奮につながるのです。しかし覚醒剤の副作用は甚大です。幻覚に悩まされ、精神・肉体は壊れます。中毒性の為習慣的服用になり、断つことは極めて難しいです。

 ヤクザ組織3次、4次団体が取り仕切る覚醒剤販売は、流通段階が分かれています。製造、元卸し、仲卸し、小卸し、売人の担い手が存在します。一般事業において、製造・販売まで一括に行う小売会社が注目を浴びています。一般事業の視点で見ると、覚醒剤販売も一括に行えば莫大な利幅を見込めると考えてしまいます。しかし覚醒剤販売は摘発リスクを伴います。1つのヤクザ組織が全てに従事すると、露見がしやすいです。担い手は多く存在していた方が、リスクを分散できます。

 覚醒剤は製造の際、強烈な臭いを発生します。摘発リスクが高い日本ではなく、東アジア諸国で製造されます。日本に密輸する方法として、昔は海上取引が主でした。海に囲まれる日本は、海からの侵入に脆弱性を持っています。東アジア諸国の地理的位置からも、船による運送が適していました。

 しかし近年は海岸警備が厳しくなったのか、航空機の一般乗客を装い手荷物や体に隠す形で密輸する方法が主要になっています。密輸の主な手段が、海を使う船ではなく、空を使う航空機に移行した為、製造元の場所はヨーロッパやアフリカが加わり多岐に渡っています。

 密輸された覚醒剤を引き取るのが、「元卸し」です。「元卸し」への取引価格は、1g約千円です。「元卸し」の担い手がヤクザ組織の3次、4次団体です。「元卸し」は、「仲卸し」に売っていきます。「仲卸し」の担い手もヤクザ組織の3次、4次団体です。つまり「元卸し」から「仲卸し」への取引は、ヤクザ組織間で実施されているのです。

 「仲卸し」への取引価格は、1g4~5千円です。「仲卸し」は「小卸し」に売っていきますが、直接一般人に売る場合もあります。一般人が購入する価格(末端小売価格)は、1g5万円~15万円です。例えば「仲卸し」は、1g5千円で仕入れ直接一般人に1g5万円で販売した場合、1g当たり4万5千円の儲けを得られます。売値は仕入れ値の10倍に設定されており、利幅が大きいです。背景に、違法薬物という存在、ヤクザ組織の独占取扱商品があります。

 少量で使用できるのが覚醒剤の特徴です。1g未満の量を「1パケ」という1包みにして、一般人に販売します。1パケの量は0.25g、0.3g、0.7g等、販売組織によって異なります。1パケにする際、覚醒剤に「混ぜ物」を加えます。販売する「覚醒剤」の量を増やす為です。例えば100gの覚醒剤を、0.25gの1パケに小分けすると、400パケになります。

 しかし100gの覚醒剤に20gの混ぜ物を加えた場合、480パケになります。混ぜ物として、塩や砂糖、市販調味料や胃腸薬が使われます。混ぜ物の混入は、ヤクザ組織間の取引段階でも、行われています。一般人の購入価格1g5万円~15万円と差が大きいのは、買い手によって値段を変えているからです。買い手が芸能人であれば、高い経済力はもちろん足元を見て、高い販売価格にします。

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