神戸山口組の概要

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 日本最大のヤクザ組織である山口組を離脱したグループが9月初旬、新組織・神戸山口組を立ち上げました。山口組内において最多の組織人数を抱えていた山健組を筆頭に、離脱した山口組2次団体計13の組織によって主に構成されています。神戸山口組の体面的な特徴として、組織名称と代紋(紋章)があります。離脱元の山口組の名前を、新組織名に盛り込んでいます。またヤクザ社会で代紋と呼ばれる紋章については、離脱元の山口組の紋章を新組織の紋章として使っています。組織の存在を視覚的に訴えるのが代紋です。一昔前までは、代紋をデザインしたバッジがヤクザ組織の威光を示す物として機能していました。代紋はヤクザ社会で大きな意味を持っています。神戸山口組の行動から、山口組の正統性を主張していることが分かります。現在の山口組には歴代の山口組の正統性はなく、神戸山口組こそに歴代の山口組の正統性があるということを、神戸山口組は伝えています。神戸山口組側に立てば、「現在の山口組は従来の山口組と異なっている」ということを言いたいのです。神戸山口組を立ち上げた山口組2次団体は、親分(六代目組長・司忍)に逆らったという事実からは逃れられません。親分子分という絶対的な垂直的関係は、ヤクザ社会にとって大事な要素です。神戸山口組も親分子分の関係を否定することは、自らのヤクザ組織を否定することになります。神戸山口組としては、負の面を消去する大義名分が必要です。それが山口組の正統性です。

*今回記事を作成するにあたり『日刊ゲンダイ』2015年9月8日号(7日発行)、9月9日号(8日発行)の情報を参考にさせて頂きました。

 ヤクザ社会で「ヤクザ組織」として認められる為には、他のヤクザ組織から認められる必要があります。今回の山口組分裂劇報道でも活躍しているフリーライターの鈴木智彦が言う「相互認証」によってヤクザ組織は成り立っています。神戸山口組を構成する主要団体は山口組から絶縁処分(ヤクザ業界追放)を下されています。他のヤクザ組織にとって、神戸山口組の存在を認めることは、山口組の主張を無視したことになります。簡単に神戸山口組を認める訳にはいきません。しかし住吉会の中核組織である幸平一家の加藤英幸総長は、9月5日に行われた神戸山口組の初の定例会に参加していました。加藤英幸総長の行動は、幸平一家が神戸山口組の存在を認めたことを示しています。住吉会の傘下団体とはいえ、幸平一家の影響力は大きいです。神戸山口組がヤクザ社会で一定の立場を持ったことを意味しています。

 神戸山口組のトップには山健組組長の井上邦雄が就きました。神戸山口組の組員は約3000人と言われています。中でも山健組傘下の組員が半数以上を占めています。五代目渡辺芳則組長時代(1989~2005年)は、五代目組長を輩出した2次団体という立場を活かし、勢いがあった組織でした。神戸山口組の若頭は俠友会の寺岡修が就きました。俠友会は兵庫県淡路島の淡路市に拠点を置いています。神戸山口組の本部を淡路市に置くという話が持ち上がっています。山口組初代組長の山口春吉は淡路島出身です。本部の場所においても、山口組の正統性を主張していく神戸山口組側の狙いが透けて見えます。寺岡修は2007年に広島県尾道市を本拠地とする独立団体・侠道会の池澤望会長と五分の兄弟盃を交わしています。寺岡修が「山口組代表」としての色合いが濃かったとはいえ、兄弟盃を交わした中だけに、侠道会の動向は気になります。侠道会は愛媛県や高知県でも活動しています。副組長には宅見組組長の入江禎が就きました。宅見組の先代組長の宅見勝は五代目時代の若頭を務めていました。経済ヤクザの代表者とも語られ、資金獲得力が群を抜いていた人物です。しかし1997年8月、同じ山口組の中野会系組員により宅見勝は射殺されます。同年11月、宅見組組長の後を継いだのが入江禎です。分裂話が出た直後、情報戦の一環か、入江禎の引退話が浮上しました。しかし実際は、引退せずに、神戸山口組の幹部として働いていく模様です。関西の経済界に深く入り込んできた宅見組は、資金獲得面において神戸山口組を支えていきます。総本部長に就いたのは正木年男です。山口組時代には、マスコミとのパイプ役を務めるなど、知恵者として実力を発揮してきました。情報戦で鍵を握る人物とも言えます。

 神戸山口組の月会費(上納金)は、山口組と比べて、格段に低いことが明らかになりました。『日刊ゲンダイ』2015年9月8日号(7日発行)の記事でジャーナリストの溝口敦は「役付き30万円、中堅20万円、若中10万円と安い。弘道会が支配する従来の山口組では若中が支払う最低額でも100万円以上だから、その10分の1といえる」と述べています。神戸山口組の若中つまり2次団体の組長は、現時点で3名います。真鍋組(尼崎市)組長の池田幸治、雄成会(京都市)会長の高橋久雄、大志会(熊本県八代市)会長の清崎達也の3名です。3名は山口組時代においては、月に100万円以上の上納金を1次団体・山口組に支出していました。しかし神戸山口組の若中になった2015年9月からは、月に10万円の上納金で済みます。真鍋組、雄成会、大志会の3団体の経済的負担は格段に軽減されます。また山口組で存在していた雑貨用品の購買、中元や歳暮等が、神戸山口組では禁止となりました。しかし神戸山口組の2次団体の下部団体(3次団体)の上納金額が軽減されることは意味していません。あくまでも1次団体と2次団体の間の資金移動に変更があったに過ぎません。山口組の全2次団体は等しい組織内容を有していません。弘道会のように下部団体(3次、4次団体)を全国に多く持ち資金力豊富な2次団体がある一方、組員が少なく経済的苦境に陥っている2次団体もあります。神戸山口組にとって「上納金の低さ」は求心力となります。神戸山口組への移籍を秘かに望む山口組2次団体が出てくるはずです。対抗措置として、山口組は上納金やその他の経済的負担を減らしてくる可能性もあります。

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