関東のヤクザ組織松葉会とは

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 現在、神戸山口組ではなく、山口組と友好関係を結んでいる関東のヤクザ組織は稲川会、住吉会、松葉会、双愛会です。稲川会と双愛会は山口組と歴史的に強い友好関係を維持し続けてきました。特に双愛会の場合、始祖に位置付けられる笹田照一が山口組二代目組長山口登(在位:1925~42年)と兄弟盃を交わした関係であり、両団体の結び付きは古いです。山口組と稲川会は1972年、重要幹部同士による兄弟盃により、親戚関係を結びました。両団体の親戚関係は、2006年に執り行われた竹内照明(山口組若頭補佐)と内堀和也(稲川会理事長)の兄弟盃により、現在も維持されています。一方、住吉会と松葉会が山口組と友好関係に至ったのは近年です。住吉会の場合、現在も山口組と親戚関係を結んでいません。しかし敵対関係ではなく、住吉会のトップを含めた重要幹部達が、山口組分裂後の昨年9月に山口組総本部を訪問するなど、両団体は友好的な関係にあります。背景には、山口組2次団体・國粹会や落合金町連合(旧國粹会グループ)の存在があります。首都圏の老舗博徒組織が集った連合組織を出自とする旧國粹会は多くの縄張りを戦後、貸しジマという形で、住吉会や稲川会の傘下団体に貸し出してしました。2005年國粹会が山口組加入後も、各地域における貸しジマ契約は存続されました。しかし代償として、関東ヤクザ組織は「縄張りの新オーナー・山口組」に一定の配慮を示すことが求められました。稲川会より勢力が大きい住吉会といえども、山口組と友好関係をとらざるをえなくなったのです。

*今回記事を作成するにあたり『実話時代』2014年5月、2015年2・7月号、『山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015』(溝口敦、2015年、講談社+α文庫)、『ヤクザ1000人に会いました!』(鈴木智彦、2012年、宝島SUGOI文庫)、『密着!ビジュアル決定版 山口組 分裂抗争の全軌跡』(別冊宝島編集部編、2016年、宝島社)の情報を参考にさせて頂きました。

 2007年松葉会は、幹部個人同士ではなく、団体同士の親戚縁組という形で、山口組と親戚関係を結びます。松葉会は東京都台東区に本部を置き、首都圏、北関東、東北、北海道に傘下団体を持つ広域ヤクザ組織です。警察庁の「平成27年上半期の暴力団情勢」によれば、松葉会の構成員は約820人です。昭和初期から戦後において土建系暴力団として活動していた関根組を前身組織とします。1960年代、松葉会は神戸を拠点にする本多会(現在は消滅)と友好関係にありました。当時本多会は拠点を同じにする山口組と同様、広域的な進出活動を見せていました。1950年代後半~1960年代前半、各地で本多会と山口組の傘下組織の抗争が起きていました。1964年、松葉会の藤田卯一郎初代会長は、本多会の二代目会長平田勝市と兄弟盃を交わし、両団体は友好関係を結びます。松葉会は山口組のライバル団体と友好関係を持ったのです。結果、松葉会は長らく山口組とは友好関係を結ぶには至りませんでした。しかし2005年國粹会の山口組加入が影響したのか、松葉会は2007年に山口組と友好関係を結びます。松葉会は1994年、1次団体と2次団体を垂直関係にする直参制度を導入します。1994年以前の松葉会において、1次団体・松葉会と松葉会に集う各ヤクザ組織の間に、垂直的関係はありませんでした。つまり松葉会は連合組織だったのです。極東会や住吉会など、現在は直参制度をとっているものの、以前は連合組織だった1次団体のヤクザ組織は多いです。

 松葉会が牙城とする地域が茨城県です。『実話時代』2015年2月号「二〇一五年度版指定21団体最新勢力マップ」(人数はすべて警察資料による)によれば、茨城県内で活動するヤクザ組織の構成員は1350人で、最大勢力が42%の占有率の松葉会です。ここでの比率が示すのは、各1次団体が抱える構成員の割合に過ぎません。ヤクザ組織の勢力を示す別の指標として、各1次団体が稼ぎ出した金額があるはずです。しかし裏稼業という特性上、警察組織といえども、各1次団体が稼ぎ出した金額を測るのは極めて困難です。よって現在、ヤクザ組織の規模を測る際、用いられるのは「構成員」要素のみになってしまいます。単純に計算すると、「1350人」の42%は567人です。前述した松葉会の構成数は約820人だったので、松葉会の7割に近い構成員が茨城県に存在していることになります。松葉会における茨城県の比重の大きさが分かります。『山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント 2008~2015』によれば、松葉会は茨城県において産業廃棄物処理場の利権でシノギをしています。土建暴力団と呼ばれた歴史を持つだけに、土建業には今も水面下で影響力を持っていることを窺わせます。

 松葉会も山口組同様、内部分裂劇の最中です。2014年松葉会七代目会長に伊藤芳将が就任すると、反発した一部の2次団体トップ達が松葉会関根組を立ち上げたのです。松葉会関根組のトップは大塚成晃(小島一家総長)です。松葉会は2009年にも、分裂騒動がありました。五代目会長牧野国泰の引退に伴い、次期会長のポストを巡り内紛が発生。現在の会長である伊藤芳将らが、松葉会同志会を立ち上げました。しかし山口組、稲川会の仲立ちもあり、分裂騒動は収集し、松葉同士会のグループは松葉会に戻りました。現在も、松葉会と松葉会関根組は双方存在しており、敵対関係にあるといえます。

 山口組分裂騒動に絡めると、松葉会の方は、昨年9月に山口組総本部を最高幹部達が訪問するなど、山口組支持をいち早く打ち出しています。一方、松葉会関根組の動向は分かっていません。しかし神戸山口組側にとってすれば、東日本の友好団体として、松葉会関根組は手を組みたい組織です。松葉会関根組にとっても、意外な展開で生まれた巨大団体・神戸山口組とのパイプを持つ選択肢は非現実ではありません。山口組の分裂騒動の余波が松葉会の分裂騒動に絡んでくる展開も今後、大いに予想できます。

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