攻撃方法の違い

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 山口組と神戸山口組の抗争事件が頻発しています。しかし山口組側と神戸山口組側の被害状況を比較すると、攻撃方法の違いが浮き彫りになります。表面化された抗争事件だけに限りますが、神戸山口組側は銃撃被害が複数あります。2月23日神戸山口組2次団体・正木組事務所銃撃、2月27日神戸山口組3次団体・誠竜会会長宅銃撃、3月6日神戸山口組傘下団体・邦将会事務所銃撃、3月14日神戸山口組傘下団体・高田組事務所銃撃、以上の被害を神戸山口組側は受けています。正木組事務所銃撃事件は山口組組員が現行犯で逮捕されていますが、他の銃撃事件に関しては、犯人は逮捕されていません。神戸山口組の全ての銃撃被害が山口組による攻撃とは断定できませんが、文脈上、山口組による攻撃と見なしてよいでしょう。一方山口組側において、今回の抗争事件で、銃撃被害を受けた件は現時点ではありません。山口組側が受けた被害としては、事務所への火炎瓶投げ込まれやトラック突入などが主です。裏返せば、山口組は拳銃攻撃を認めて、神戸山口組は拳銃攻撃を認めていないことが分かります。

*今回記事を作成するにあたり『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』(実話時代編集部編、2003年、三和出版)の情報を参考にさせて頂きました。

 拳銃攻撃に踏み切った山口組も人身に向けた発砲をしていません。業界用語「カチコミ」と呼ばれる建物への銃撃に抑えています。背景には、ヤクザ組織間抗争における殺害に対する警察当局の厳しい取締りがあります。現在日本の法環境は、組織的犯罪処罰法で、殺害した側の2次団体トップも処罰できます。場合によっては1次団体トップも処罰できる状況になっています。山口組、神戸山口組ともに、拳銃や長期服役に耐える構成員を持ち、敵対組織の構成員を銃殺する手段を持っています。しかし法環境により、銃殺手段の行使には至れない状況下なのです。

 山口組主流派である弘道会は敵対組織構成員の銃殺に長けてきた組織です。ヤクザ組織においても、銃殺という行為には、組織により温度差が見られます。銃殺する役割の組員は長期刑に服することになります。組織内の人間関係による圧力だけで、組員を銃殺実行に向かわせることはできません。経済的な見返りが必要となります。ヤクザ組織は実行組員に対して、服役期間家族への経済的支援、服役後の重要ポストへの登用を行うことで報いなければなりません。組織力がないヤクザ組織では、銃殺という攻撃を行えません。つまり組織力がある組織ほど、銃殺という攻撃手段を取りやすいのです。弘道会は日本各地に傘下団体を持ち、豊かな経済力を有しています。抗争による服役者を敬う組織風土が確立されています。加えて、ヤクザ組織間抗争における銃殺において、重要な位置を占めるのが情報収集力です。ヤクザ組織間抗争における銃殺手段は、至近距離に近づいての発砲の為、高度な銃撃能力は求められません。抗争状態になれば、狙われる幹部達は身を隠します。建物と異なり人間は移動できます。身を隠す敵対幹部達を的確に捕捉するのは至難の業です。「敵対組織の建物への銃撃」と「身を隠す敵対幹部の体への銃撃」は質が異なるのです。2003年弘道会は住吉会有力2次団体・親和会と抗争に至りました。この抗争において、弘道会は親和会構成員に向けた発砲攻撃を行いました。発砲攻撃に至る時間が早かったことで、弘道会の情報収集力の高さが示された抗争でもありました。

 しかし銃殺攻撃を可能とする組織力や情報収集力を弘道会だけが有している訳ではありません。神戸山口組主流派の山健組も過去の抗争において、弘道会同様に、銃殺攻撃を行っています。1993年極東会と山健組は抗争に至ります。同年7月17日札幌市で、トラブルで極東会系組長が山健組系組長を刺殺する事態が起き、抗争が開始されました。7月21日極東会と山健組が和解して抗争は終了します。その間、山健組は極東会構成員の人身に向け発砲する事件を多く起こします。山健組の銃撃により、極東会は多くの重傷者に加え、2名の死者を出します。極東会も発砲攻撃を行いました。しかし人身には向けず、山健組の事務所や組員宅への銃撃にとどまりした。1993年の抗争において、山健組は組織力や情報収集力の高さを示したのです。

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