髙山組組員出頭から透けて見えてくるもの

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 5月31日岡山市で起きた神戸山口組2次団体・池田組若頭射殺事件の実行犯として、山口組2次団体・弘道会の傘下組員が6月5日、捜査本部の岡山南警察署に出頭しました。5月26、27日開催の伊勢志摩サミットを控えて、山口組と神戸山口組はともに抗争事件となる暴力沙汰を表面上避けていました。サミット終了後、抗争再開は予想されていました。しかし昨年から始まった抗争において、「敵対幹部射殺」という段階にまで至ることはなかったですし、その展開を予想するジャーナリストは少なかったです。射殺した側は、組織犯罪処罰法違反の罪により上層部まで長期刑に処される環境下に現在あるからです。よって5月31日の射殺事件は、これまでの抗争の文脈上、飛躍がありました。

 6月5日岡山南警察署に出頭してきた人物は、弘道会の中でも、有力組織の1つである髙山組に属する30代の組員でした。そのことから、射殺事件の実行犯が山口組側であったことが明らかになったともに、弘道会及び髙山組の「ある主張」が透けて見えてきます。池田組若頭射殺事件の前後に、次第に表面化されてきた話として、山口組と神戸山口組の再合併話とその交渉破綻があります。現代ビジネス(http://gendai.ismedia.jp/list/welcome)6月2日配信伊藤博敏 ニュースの深層「山口組幹部射殺事件、抗争はどこへ向かうのか? 7代目を巡る「新体制」の極秘シナリオ」という記事によれば、神戸山口組からの提案として、①司忍組長は名誉職の総裁のような地位に就き七代目組長に神戸山口組トップの井上邦雄が就く、②司忍組長は続投で井上邦雄が若頭に就くという2案が出ました。この案を一度司忍組長は認めましたが、現在服役中の山口組若頭の髙山清司は反対したことで、避けられました。神戸山口組側が再合併の交渉が破綻した直接的な理由かどうかは確認できません。また山口組側も再合併案の提案をしたはずです。多くの要因が重なり合った結果の交渉破綻と見るのが妥当です。

 しかし神戸山口組の提案で一番困るのが、本人の拒否が示すように、髙山清司自身です。山口組は歴史的に、「山口組組長」より地位の高さを示す「総裁」というポジションを置きませんでした。住吉会や稲川会、工藤會においては、力のあるトップが退く際、総裁職に就くという例が見られます。総裁を置かず、トップを実質的に1人にすることによるシンプルな権力体制こそが、山口組の力の源泉であると、山口組自身が考えていた傾向があります。歴史的な背景を考えると、総裁職を導入することは考えにくいです。となると、井上邦雄が若頭に就くという案が、考えられます。若頭の職は1つだけです。つまり髙山清司が若頭職から離れることになります。

 若頭の職務を分担する方法もあります。今回の分裂抗争で頭角を現した織田絆誠の神戸山口組内の職は「若頭代行」です。神戸山口組の若頭は寺岡修が務めています。神戸山口組では、若頭の職務を実質、寺岡修と織田絆誠で二分していると考えられます。しかし若頭代行は、前任の若頭が辞任後に就く職ではありません。織田絆誠の抜擢が示すように、若頭代行は「次期若頭を目指す者」が就く職です。再合併後における井上邦雄の山口組若頭就任は、髙山清司の引退を意味するのです。恐喝罪の確定により、髙山清司は2014年から懲役中です。懲役は6年の為、出所予定は2020年となっています。髙山清司を敵対視する側にとって、現在は、ヤクザ界で髙山清司が築き上げた地位を剥奪する絶好の機会です。

 神戸山口組の再合併案からは、髙山清司からの権力剥奪の狙いが見えてきます。裏返せば、神戸山口組側がいかに髙山清司を恐れているかが分かります。髙山清司の手腕により勢力を拡大してきた弘道会にとっても、神戸山口組の再合併案は了承できません。髙山清司自身が結成した髙山組にとっては、許し難い案と言えます。現在の弘道会のトップである竹内照明会長、ナンバー2の中野寿城若頭はともに髙山組出身者です。2人とも髙山組で若頭職を経験しています。1976年~1980年代前半、弘道会の前身組織・弘田組の傘下団体・菱心会で理事長職を務めていた髙山清司が自身の組織として率いていたのが髙山組です。つまり当時の髙山組は山口組の4次団体に過ぎませんでした。その頃までに、竹内照明は髙山組に入ります。髙山組が4次団体という小規模な組織の時代から、髙山清司と竹内照明の人間関係はスタートしています。後に、髙山組は弘道会の2次団体に昇格します。

 弘道会及び髙山組にとっては、昔の「親」であった髙山清司の地位を失くす神戸山口組の案を受け入れることは、「組織の退潮」を内外に示唆させてしまうかもしれないのです。池田組若頭射殺事件により、再合併の動きは一時的に停滞します。神戸山口組が出した再合併案に大いに不満であることを強く主張する為に、射殺そして出頭の行動を企てたとは考えられないでしょうか。もちろん今後の状況により、話は変わってきますが、ともかく再合併は当分見送られたと考えられます。

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