一般企業の資産を流出させるシノギ

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 ヤクザ組織は暴力装置を活用する資金獲得団体です。暴力装置とは、法律違反を恐れない行動力や暴力の行使、服役生活に耐えうる人員の存在を指します。暴力装置ばかり注目される側面がありますが、ヤクザ組織は資金獲得団体、つまりお金を手にすることを目標に、存在している組織であります。ヤクザ組織は、「表社会のルール」では収まりきらない問題がよく起きる金融、不動産、土建、風俗などの業界に入り込み、「暴力装置の威光」と「暴力装置」を“販売”してきました。ヤクザ組織から「暴力装置の威光」を買った業者は、「暴力装置の威光」をもとに業界内のトラブルを解決していきます。いわゆるヤクザ組織が業者の「ケツを持つ」という関係です。時に、業者は「暴力装置」自体の利用もしてきました。昔、スナックなどの接待飲食店における「売掛金(飲食代のツケ)の回収」をヤクザ組織が実働部隊として担う場合がありました。『弘道会の野望 司六代目と髙山若頭の半生』(木村勝美、2015年、メディアックス)によれば、ヤクザ業界では「キリトリ」と呼ばれる行為です。ホステスで売掛金を回収できない困った客には、何か強い衝撃が必要となります。ホステス達の売掛金回収においては、「組員の強面の威圧」という「暴力装置」の需要があったのです。とはいえ回収された金全額がホステスの元に入る訳ではありません。「暴力装置」を利用した代償は大きいです。程度の差はありますが、回収された売掛金は折半されました(*1)。

 ヤクザ組織が会社経営に深く関与する場合もあります。深く関与される会社は、「企業舎弟」や「フロント企業」と呼ばれます。『実話時代』2015年1月号「弘道会の「強さ」とは何か」の記事内で、「弘道会では幹部組員のほとんどが正業の会社を経営するなどしているという」(36P)と述べられています(*2)。警察の取締りが厳しい昨今、ヤクザ組織自体が表立って活動することが制限されています。「身代わりの存在」としての企業舎弟やフロント企業は、ヤクザ組織にとって重宝されます。

 また近年では、ヤクザ組織とは縁遠い一般企業を乗っ取り、企業資産を流出させるシノギも現れています。ヤクザ組織の幹部が標的企業の株式を取得する訳にはいきませんので、影響下にある事業者などを利用します。まず標的企業の株式を取得させ、会社経営権を奪います。ヤクザ組織の影響下にある事業者が、収めた企業の経営をしていくことになります。持ち株会社に移行して、ビジネスを実際行う傘下企業から「経営指導料」「顧問料」「不動産賃貸料」という名目で金を親会社に吸い上げていきます(*3)。ビジネスを行う傘下企業は「余分な金」を取られる一方、ビジネスを行わない親会社は「余分な金」を手にする仕組みです。ヤクザ組織の影響下にある事業者達が居座る親会社から、さらに何らかの形で、その資金を社外に流出させていきます。上場企業であれば、新株発行による増資という手段も行います(*4)。株式市場からやってくる資金の多くは、本業に使われず、親会社に流れていきます。会社内の資金の流れには、違法性はないので、表面化しにくいです。しかし本来、本業に使われる資金が削られていけば、会社経営が傾くことにもなります。

<引用・参考文献>

*1『弘道会の野望 司六代目と髙山若頭の半生』(木村勝美、2015年、メディアックス、39P)

*2『実話時代』2015年1月号36P

*3『ZAITEN』2014年9月号「“アジアのマネロン王”に融資する邦銀にFBIの鉄槌」(山口義正、27P)

*4同上

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