極東桜井一家関口代目と極東会

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 公安委員会から指定暴力団の認定を受ける極東会は日本最大のテキヤ組織でもあります。極東会は昨年トップ人事を行いました。1990年から約25年会長職に就いていた松山眞一が退き、新会長に高橋仁理事長が就任しました(*1)。極東会において理事長はナンバー2の役職である為、順当なトップ交代人事と言えます。

 1927年生まれで今年89歳になる松山眞一は「極東五代目」という立場として、現在も極東会に残っています。極東五代目の「五代目」が示すように、極東五代目は代目のあるポジションです。極東五代目は、極東会会長職の代目ではなく、「極東桜井一家関口の代目」です。極東会の前身組織は、極東関口会でした。

 1990年、極東関口会から極東会に組織名が改称され、極東会の初代会長に就任したのが松山眞一でした(*2)。当時極東桜井一家関口の代目は田中春雄が四代目を務めていましたが、その後1993年4月死去します(*3)。同年10月、極東会会長の松山眞一が「極東桜井一家関口五代目」を継承します(*4)。1998年、名称が「極東桜井一家関口五代目」から現在の「極東五代目」に変更されました(*5)。

 「極東桜井一家関口」は代目だけ付き、会長、総長、組長などの役職名が付いていません。「極東桜井一家関口の代目」は組織のトップを表す名前ではなく、名誉的意味合いの強い名前です。とはいえ、極東会前身組織のトップ達は「極東桜井一家関口」の代目も兼ねていました。極東桜井一家関口初代は1897年生まれの関口愛治です(*6)。若き頃横浜で、桜井庄之助が興した桜井一家のもとで修行した後、東京で自身の関口グループを立ち上げます(*7)。

 「極東桜井一家関口の代目」に入っている「桜井一家」は、横浜で修行した桜井一家を指しています(*8)。関口愛治が興したグループの名称は「極東クラブ」「極東愛桜会」などと変更していきました(*9)。「極東」の名前は、関口愛治が1927年に設立した「極東秘密探査局」から由来すると言われています(*10)。関口グループは、テキヤ組織の縄張りである庭場を持たず、地方の祭りに遠征して稼ぐテキヤ組織でした(*11)。戦後の混乱期、関口グループは暴力装置を行使して、池袋や新宿で勢力を拡げていきます(*12)。関口グループの新宿進出で行動隊長を担ったのが松山眞一です(*13)。

 1961年、関口グループは全国の他のテキヤ組織と合併し極東愛桜連合会を結成します。極東愛桜連合会の会長に就任したのは1909年生まれの小林荘八です(*14)。関口愛治は極東愛桜連合会においては、総帥の立場でした(*15)。しかし1967年2月、警察当局の厳しい取締りにより、極東愛桜連合会は解散に追い込まれます。

 旧関口グループは、「関口会」として再活動します(*16)。同年11月、関口愛治が死去します。後を継いだのが、極東愛桜連合会の会長を務めていた小林荘八でした。しかし小林荘八が継承したのは「二代目」ではなく、「三代目」の極東桜井一家関口でした。関口愛治は1930~1939年の間刑期に服しており、その間関口グループを率いたのが1904年生まれの山口城司でした(*17)。組織の功労者である山口城司は1967年当時、病を患い、組織のトップを務める状態ではありませんでした(*18)。

 山口城司に極東桜井一家関口二代目に名目上継承させた上で、小林荘八が極東桜井一家関口三代目を継承する形がとられたのでした(*19)。山口城司は1970年死去します(*20)。1980年小林荘八は引退し、1918年生まれの田中春雄が極東桜井一家関口四代目を継承します(*21)。1979年「関口会」は「極東関口会」に名称を変更し、1980年極東関口会会長に田中春雄が就任します(*22)。田中春雄は「極東関口会会長」を1980~1990年まで、「極東桜井一家関口四代目」を1980~1993年まで務めました。

 一方、松山眞一は「極東会会長」を1990~2015年、「極東桜井一家関口五代目(1998年から極東五代目)」を1993~2016年現在まで務めています。両者とも権力者としての晩期、「極東の組織トップ職」を辞めるものの、「極東桜井一家関口」のポジションには居続けています。権力の全面移譲は避ける狙いが背景にあると推測されます。田中春雄が極東会のトップにいた時代、広域ヤクザ組織の寡占化が進み、全国のテキヤ組織は同じ稼業の極東会に入っていきました(*23)。

<引用・参考文献>

*1, 『週刊実話』2015年11月19日号p41

*2 『実話時代』2016年9月号

*3 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』(実話時代編集部編、2003年、三和出版), p74

*4 同上, p75

*5 『実話時代』2016年9月号

*6 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』, p26

*7 『実話時代』2014年8月, p54

*8 同上

*9 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』, p12

*10 同上, p11~12

*11 同上, p10

*12 同上, p10~11

*13 同上, p75

*14 同上, p72

*15 同上, p128

*16 同上, p73

*17 同上, p52,60~63

*18 同上, p73

*19 同上

*20 同上, p71

*21 同上, p74

*22 同上, p16,74

*23 同上, p96

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